EV(電気自動車)向け車載電池の主要原料であるリチウム。中国では今、2022年晩秋から始まった相場下落に歯止めがかからなくなっている。
非鉄金属情報サイトの上海有色網のデータによれば、電池向け炭酸リチウムの2月24日時点の取引価格は1トン当たり39万9800元(約781万円)と、年初の同51万元(約996万円)から2カ月弱で2割以上も落ち込んだ。
中国自動車市場でのEVの販売が予想を超えて拡大したことを追い風に、リチウム相場は2021年から右肩上がりの高騰を続けた。2022年11月には1トン当たり60万元(約1171万円)に迫る過去最高値をつけ、市場の熱狂はピークに達した。
今から振り返れば、これはサプライチェーンの川下(に位置するEVメーカーや電池メーカー)で生じた急激な需要拡大に、川上のリチウム鉱山の増産が追いつかなかったことによる短期的な現象だった。
リチウム相場はそこから下落に転じ、1日平均2500元(約4万8800円)のペースで下がり続けている。背景にはEV販売の伸び率の鈍化と、それに伴うEVメーカーや電池メーカーの在庫増がある。
中国でEV販売の伸び率鈍化
中国汽車工業協会のデータによれば、中国市場における2022年12月の「新エネルギー車」の販売台数は、前年同月比51.8%増の81万台だった。一見悪くない数字だが、2022年の秋口まで前年同期比倍増が当たり前だったことを考えると、失速ぶりは否めない。
(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、EV、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)
追い打ちをかけたのが、中国政府が新エネルギー車の普及促進のための補助金支給を2022年末で打ち切ったことだ。さらに春節(旧暦の正月、今年の元日は1月22日)の休業期間が重なったことも響き、2023年1月の新エネルギー車の販売台数は40万8000台と前月の半分に急減した。
EV販売の伸び率鈍化は、EVメーカーと電池メーカーの在庫増を招き、電池メーカーは生産調整を余儀なくされている。業界団体のデータによれば、車載電池の2023年1月の生産量は28.2GWh(ギガワット時)と、前年同月比5%減少。前月比では46.3%の大幅な落ち込みとなった。
短期的にはEV販売が急回復する見込みは薄く、市場関係者はリチウム相場のさらなる下落を見込んでいる。
「新エネルギー車の普及ペースが減速すれば、リチウム需要の増加ペースも緩やかになる。電池向け炭酸リチウムの相場は、2023年は1トン当たり30万~35万元(約586万~683万円)、2024年には同20万元(約390万円)の水準まで下がるだろう」。中信建投証券は2月23日に発表した調査レポートで、そう予想した。
(財新記者:蘆羽桐)
※原文の配信は2月25日
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