EV(電気自動車)の動力源である車載電池の市場が、大きな転機を迎えている。過去2年間、中国の電池メーカー各社はEVの販売急増を追い風に、生産能力の拡大競争を繰り広げてきた。ところが、ここにきて電池の在庫がにわかに膨張。業界内に在庫処分を急ぐ動きが広がり始めた。
「車載電池の在庫は電池メーカーとEVメーカーの両方に積み上がっている。そのうち電池メーカーの在庫は(容量ベースで)約80GWh(ギガワット時)、EVメーカーは約103GWhに上る」ノルウェーの調査会社リスタッド・エナジーの副総裁(副社長に相当)を務める鄒鈺屏氏は、2月21日に開催されたフォーラムの席上でそんな試算を示した。
鄒氏の試算は、車載電池の業界団体である中国汽車動力電池産業創新連盟(電池連盟)と自動車メーカーの業界団体である中国汽車工業協会の統計データに基づいている。電池メーカーの在庫は車載電池の生産量と販売量の差異から、EVメーカーの在庫は車載電池の販売量、輸出量、EVへの組み付け量の差異から算出した。
大手以外は淘汰の危機
電池メーカーが生産能力を増強する過程で、車載電池の生産量とEVへの組み付け量のミスマッチは徐々に拡大していた。だが、在庫増への危機感が業界内で頭をもたげてきたのは、2022年の後半になってからだ。
電池連盟のデータによれば、車載電池の生産量とEVへの組み付け量の差異は、2020年は19.8GWhにすぎなかった。それが2021年は65.2GWhと前年の約3.3倍に、2022年は251GWhと同約3.8倍に膨れ上がった。そのうち2022年の数字から同年の輸出量の68GWhを引くと、中国国内の(電池メーカーとEVメーカーを合わせた)総在庫量は183GWhとなる。
「2022年までは需給がタイトだったのに、2023年に入るとたちまち供給不足が解消した」。財新記者の取材に応じた中堅電池メーカーの幹部は、市場の風向きの急変ぶりをそう話す。
別の大手電池メーカーの関係者は、2023年後半には業界全体の生産能力が(需要に対して)過剰になるとの見方を示し、こう警鐘を鳴らした。
「車載電池業界は構造的な生産能力過剰に陥り、熾烈な競争に突入する可能性がある。大手メーカーは(自社の生産能力に見合った)十分な受注を確保できるかもしれないが、中堅以下は淘汰のリスクにさらされるだろう」
(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は2月23日
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