中国の電池材料大手の華友鈷業(ホアヨウ・コバルト)は2022年12月28日、同年6月に発表した総額177億元(約3397億円)の第三者割当増資計画を中止したと明らかにした。それに代わる資金調達手段として、スイスの証券取引所にグローバル預託証券(GDR)の上場を目指す。
第三者割当増資を断念した理由について、同社は「会社の現状、今後の成長戦略、GDRの発行計画などを(総合的に)考慮した」と説明している。
華友鈷業は浙江省桐郷市に本社を置く民営企業で、上海証券取引所に上場している。今回中止した第三者割当増資は、親会社の華友控股集団(ホアヨウ・ホールディングス)を含む最大34組の投資家を引受先とし、華友控股集団が現金で最大5億1000万元(約98億円)を出資する予定だった。
2002年に創業した同社は、(電池の主原料として使われる)コバルトとニッケルの採掘・精錬から事業をスタート。近年はEV(電気自動車)の急速な普及を追い風に、車載用リチウムイオン電池の正極材料などにも事業分野を拡大していた。
2023年はニッケル相場も下落へ
上述の増資計画を発表したタイミングは、(後から振り返ると)まさに電池材料業界の好景気のピークだった。ほどなく業界全体の生産能力が過剰になり、原材料の金属相場も下落に転じて経営環境が急変。華友鈷業の株価は2022年7月5日に年内最高値の102.38元(約1965円)をつけたが、同年12月29日の終値は55.97元(約1074円)と半値近くに下落した。
中国の非鉄金属情報サイト、上海有色網のデータによれば、電解コバルトの中国国内の市場価格は2022年12月28日時点で1トン当たり32万5000元(約624万円)と、同年初めの水準から3割以上値下がりしている。一方、電解ニッケルは1トン当たり23万2000元(約445万円)と、逆に5割以上値上がりした。
とはいえ、今後はニッケル相場も下落に転じる可能性が高い。「全世界のニッケル供給量は、2022年から2023年にかけて82万トンの増加が見込まれている。供給過剰の局面への変化に注意が必要だ」。国有非鉄金属大手、中国五鉱集団傘下の先物取引会社である五鉱期貨は、調査レポートでそう警鐘を鳴らした。
(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は2022年12月29日
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