中国のEV(電気自動車)最大手、比亜迪(BYD)の新型PHV(プラグインハイブリッド車)が、低価格を武器に市場を席巻している。
同社は2月15日、小型PHVセダン「秦PLUS DM-i 冠軍版」の受注台数が発売から5日間で2万5000台を超えたと発表した。同車は最廉価グレードの希望価格が9万9800元(約194万7000円)と、PHVで初めて10万元(約195万1000円)を切る価格で投入された。
同一車種に(駆動方式の違いで)EV、PHV、エンジン車の3つが揃っている場合、通常はEVの価格が最も高く、PHVがその次で、エンジン車が最も安い。EVとPHVは高価な車載電池を搭載しており、前者のほうが電池の搭載量が大きいためだ。
ところがBYDは、PHVである秦PLUS DM-i 冠軍版に(車格が)同じクラスのエンジン車と並ぶ値札をつけてきた。エンジン車の人気車種である日産の「軒逸(シルフィ)」やフォルクスワーゲン(VW)の「朗逸(ラヴィーダ)」などにとって、手強いライバルが出現した格好だ。
消費者のイメージを一変
「BYDのクルマはもともと価格性能比が高かった。そのうえ最低価格が10万元を切ったことは、競合メーカーにとって大きなプレッシャーだ」。ある外資系合弁メーカーのセールス担当者は、そう率直に話す。
PHVは動力源として電池とエンジンの両方を搭載し、短距離走行時は主に電池を使用。長距離走行時(やパワーが必要な時など)はエンジン駆動に切り替える。BYDは2021年、独自開発した4世代目のPHV技術「DM-i」を導入し、エネルギー効率とコストパフォーマンスを向上させた。
DM-iの登場をきっかけに、BYDのPHVは人気に一挙に火がついた。同社が2022年に販売したPHVは94万6000台に上り、前年の約3.5倍に急増。BYDはEVのラインナップも豊富だが、売れ行きは今やPHVが勝っている。
自動車業界関係者の多くは、かつてはPHVをエンジン車からEVへの移行期の「つなぎ商品」と見なし、コスト競争力は高くないと見ていた。ところがBYDは、DM-iの開発を通じて高性能・低燃費のPHVの低コスト生産に成功した。それにより、消費者のPHVに対する(割高という)イメージを一変させたと言えそうだ。
(財新記者:余聡)
※原文の配信は2月16日
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