「奨学金350万円」現役大学生が語るリアルな不安 中流家庭の普通の子が「借金を背負う」ということ

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そもそも、奨学金の各種申請はインターネットから通じて行うものと、紙で郵送するものの2種類ありますが、期限が迫っているときは、どちらの申請手順を取るべきなのかわからなくなり、混乱してしまいます。結局、ネットで申し込んだところで、別途紙で提出しなくてはならないときもありますけどね」

お金の管理には人一倍気を使っている中岡さんですら、わからなくなるのであれば、アルバイトや勉強に明け暮れて余裕のない学生たちが、見落としてしまいがちになるのも無理もない。

「お金を借りるのだから、それぐらいの労力は割くべきだ」という反論もあるだろうし、それは真っ当でもある。ただ、お金に困っている学生ほど目先のバイトに時間を使い、情報を調べる時間的・精神的リソースが限られ、結果的にバイトをする必要のない、余裕のある学生ほど奨学金の情報にリーチしやすい……そんな現実もまた、存在しているのだ。

社会人になってからの覚悟と怒りの矛先

そして、今はまだ大学2年生ではあるが、来るべき卒業後の返済についても、すでに覚悟は決めている。

「しっかり正社員として就職して、人並みにお金を稼いで、20年間で返す……。今からでも、月々いくら返済していくのかはシミュレーションできるため、そのことを踏まえて就職先は考えたいです。

そして、結婚するときは奨学金に理解がある人がいいですね。やはり、大学進学のためには必要だったとはいえ、『借金がある男と娘を結婚させたくない』と思う親も多いでしょう。こうした世間の認識については、僕も納得しているため、社会人になってからは『奨学金=借金』を抱えて生きています」

金融リテラシーの賜物というべきか、あまりにも現実的思考というべきか……。まるで、夢がない。

奨学金、借りたら人生こうなった (扶桑社新書)
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当然ながら、そのことをいちばん理解しているのは中岡さん本人である。その怒りの矛先は、今の不景気を生み出した大人たちに向けられている。

「僕が生まれるずっと前から、この国は経済成長していません。給料は上がることなく、逆に可処分所得は減っています。そのくせに、政府は増税を声高に叫び、それでいて学費は下がらない……。もどかしいというわけではないですが、『どうして、こうなっちゃったんだろう』とは思ってしまいます」

これまで本連載で見てきたように、奨学金を借りてきた人たちは、社会に出てから何かしら苦労は経験しながらもなんとか返済してきた。人生を好転させてきた人も多く、その点では奨学金制度は、一定の評価を得るべきだろう。

だが、自身を「中流家庭」出身と評する現役の学生が、これからの返済に不安を抱えながら学生生活を送っているのも、また現実なのだ。

奨学金制度はどのように改善していくべきか。縮小していく日本経済のなかで、なんとかもがこうとしている若者たちのためにも、さらなる議論が求められる。

奨学金借りたら人生こうなった
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千駄木 雄大 編集者/ライター

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せんだぎ・ゆうだい / Yudai Sendagi

編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。奨学金、ジャズのほか、アルコール依存症に苦しんだ経験をもとにストロング系飲料についても執筆活動中。奨学金では識者として、「Abema Prime」に出演。編集者としては「驚異の陳列室『書肆ゲンシシャ』の奇妙なコレクション」(webムー)なども手掛ける。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)。原作に『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』がある。毎月、南阿佐ヶ谷トーキングボックスにて「ライターとして食っていくための会議」を開催中。

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