稲盛和夫が社員の心を掴んだ「カラオケの曲」 信用が「尊敬」まで行くとステージが変わる
工場見学で感じた「この人は違う」
サイバネット工業は、私を含めた4人で立ち上げた会社でした。もともと富士通で展開していたビジネスでしたが、半導体に力を入れるために小さなビジネスをやめることになった。所属していた音響機器部門がなくなることになったんです。
ただ、アメリカにはその部門でつくっていたトランシーバー製品を販売している会社があって、事業がなくなると困ってしまう。この会社を救わないといけない、ということで独立して製品を供給しよう、となりました。
私はもともと先に退職するつもりでいたんですが、一緒にやらないかと誘われて、加わることにしました。ビジネスのベースはすでにありましたから、それはもうものすごい勢いで成長しました。
それこそ、ボーナス袋が横向きに立つ、なんて時代もあったんです。私は役員でしたので、関係ありませんでしたけど。
ところが、アメリカのチャンネル変更や輸入規制など、いろんな問題があって一気に売り上げが落ちて、まさに倒産寸前まで行きました。会社をスタートさせて10年目。私は41歳になっていました。
当時は福島工場の工場長でしたが、賞与もない、昇給もない中、とにかくあちこちから仕事をもらってきて、なんとしてでも社員を食わせたい、という思いでいました。
実は福島工場には、いろんな会社が見学に来ていました。社長が引き取ってもらえる会社を探していたんでしょう。このとき、稲盛さんも来たことがあったんです。それで、私の工場を見てもらった。
何社か工場案内していますから、私はもう慣れていて、それなりにコースをつくって説明していたんですが、稲盛さんは最初から他の会社の人とは違いました。この人は違う、と思いました。
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