稲盛和夫が社員の心を掴んだ「カラオケの曲」 信用が「尊敬」まで行くとステージが変わる

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さらに稲盛さんは、「よし、じゃあ飲みに行こう」と言いましてね。先斗町のスナックにみんなで行ったんです。「乾杯!」とやったあとは、「みんな頑張ろうな。よし、おれが歌おう」とカラオケに向かって。

最初の曲が「みちづれ」だったんですよ。いやぁ、これを聞いたとき、この人はニクいと思いました(笑)。なんという人だと。このときのコンパと歌で、私はすっかり心を持っていかれてしまったんです。

私は30歳で富士通を辞めたんですが、大きい会社では出世できないと思ったからでした。京セラに入ったからには、何でもチャレンジしようと思いました。そして稲盛さんに、なんとしてでも恩返ししたい、という気持ちが強かった。

京セラは当時、伊勢工場で複写機の開発に取り組んでいました。これが、そろそろ量産化できるか、できないか、という状況にあった。京セラが(部品ではなく)完成品を開発していたのは、意外なことでした。

私がなるほど、と思ったのは、完成品を量産できる会社を探していたのか、ということでした。そんなとき、サイバネットがまさに出てきた。タイミングがよかったんだと思います。もちろん結果的に、無線技術は第二電電(後のKDDI)でも活かされていくことになるわけですが。

「信用」が「尊敬」まで行くと、ステージが変わる

稲盛さんの話で私が最も好きなのは、「自利利他」なんです。「利他」が強調されることが多いんですが、私は「自利」も大事だと思っています。

『熱くなれ 稲盛和夫 魂の瞬間』(講談社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

自分が損して利他だけ、つまり他者にいいことばかりしていたら、これでは商売になりません。相手に利を与えて、結果それが自分に返ってくるのが「自利利他」の本質です。

ただ、ものを安く売ったとか、まけて何かしたからって、利が返ってくるとは限りません。ものやお金ではないんです。相手が喜ぶ、感動する、素晴らしいと感じる。「いやぁ、この人のためなら」と思う。これこそが、大事だと思うんです。

商売というのは信用が大事です。信用第一。ですが、信用が信頼になったら、もっと商売は楽になります。これが尊敬というところまで行けば、またステージは変わる。これを持っているのが、まさに稲盛さんですよね。

稲盛さんは、全社員から好かれ、尊敬されている。サイバネットから来た社員も、みんな心酔していました。これこそが、経営者でなければいけない。そしてこれこそが、事業の立て直しの本質だと私は思っていました。

上阪 徹 ブックライター

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うえさか とおる / Toru Uesaka

ブックライター。1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒業。ワールド、リクルート・グループなどを経て、1994年、フリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍、Webメディアなどで幅広くインタビューや執筆を手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品は100冊以上。2014年より「上阪徹のブックライター塾」を開講している。著書は、『1分で心が震えるプロの言葉100』(東洋経済新報社)、『子どもが面白がる学校を創る』(日経BP)、『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)など多数。

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