自然体で生活を楽しむ“ウィズエイジング” マガジンハウス最高顧問・木滑良久氏④

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きなめり・よしひさ 1930年、東京生まれ。立教大学文学部卒業後、平凡出版(現マガジンハウス)入社。『週刊平凡』『平凡パンチ』『アンアン』の編集長を経て、『ポパイ』『ブルータス』『オリーブ』など人気雑誌を創刊。88年同社社長、96年会長。98年より同社最高顧問。

人と付き合う際は、ベタベタ付き合ってもダメですし、そうかといって冷たく離れて付き合ってもダメ。その呼吸が大切なんです。いちばんよくないのが、土足で他人の家に入るみたいな付き合い方。それでは長続きしません。誰に対しても甘えず、礼儀正しく付き合う。どんな相手でも、その鉄則には変わりはありません。

就職して『月刊平凡』編集部に配属になったとき、歌舞伎役者の先代・中村錦之助さんと出会いました。名刺を出したら「木滑って変わった名前だね。呼びにくいから『後藤さん』って呼ぶことにしよう」と宣告され、「面白い人だなあ」と、すっかりファンになりました。

僕はどんな人でも自分にないものを持っていると思うし、魅力を感じます。でも、最近会っていないなと思う人に、折に触れて電話をしたり、そういう気配りはあまりしないですね。自分からは年賀状も出さないぐらいですから。

本当に面白いですから、生きるってことは

人間は基本的には独りです。つながっていないと不安だという気持ちは、持たないほうがいい。最近、「無縁社会」という言葉を聞きますが、当たり前ですよ。いつも誰かとつながって騒いでいるだけが、人間の社会ではないでしょう。

生きているということは、すべて自己責任の世界です。ゴルフのよさは、人のせいにできないということ。変な所にボールが飛んでいったのは、全部自分のせい。人のせいじゃないから、文句も出ません。

僕が「81歳です」と言うと、みんな「お若いですね」とびっくりします。でも、無理に若作りをしているわけではありません。アンチエイジングに対抗して、ウィズエイジングと言っていますが、年を取れば体に衰えが来るのは当たり前。それを受け入れて、神の御心のままに、無理をせずに楽しんでいるだけです。もちろん、日常生活でいろんな興味を持ってトライしていくことは大事ですけど。

非常に難しい問題ですが、人間を人工的に長生きさせるのは、僕はどうかと思います。だから、終末期医療に関する法制度に興味があります。ドイツでは、本人と周辺の人、医者の合意があれば、無理な延命治療を停止することが合法と判断されました。意識もないのに機械で生かしておくことの是非も、問う必要があるのではないでしょうか。

できることなら、「ああ面白い人生だった」と、最後に言えたらうれしいですよね。だって本当に面白いですから、生きるってことは。

週刊東洋経済編集部
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