「大学院進学」の減少が止まらないこれだけの理由 進学希望は多い一方アカハラや学費等の悩みも

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
拡大
縮小

ここで、大学院生の実情にスポットを当てた調査を見ていきたい。2023年3月に「全国院生生活実態調査」の結果が発表された。これは全国大学生協連が2年に1回実施しているもので、今回の調査は2022年秋に行われ、全国の院生4645人から回答を得た。

調査は研究活動に関することから、就職活動、経済事情まで多岐にわたる。この中で、悩みやストレスの原因についての質問では、「生活費や授業料などお金に関すること」の割合が、前回調査に比べて大幅に増えていた。

(出所)全国大学生協連 院生生活実態調査2022年調べ (単位 %)

「お金に関すること」には、いくつかの要素がある。1点目は生活費の確保だ。修士課程の学生の収入では、前回と比較して「仕送り・こづかい」が減少し、「アルバイト収入」が増加している。研究活動と両立させるために、苦心している学生が少なくないようだ。

学生側の自己負担が多い

2点目は、研究費の自己負担が増加していること。専門書や参考文献などの書籍代、学会費、調査費用など全ての項目で自己負担は増えている。

もちろん、新型コロナの影響が薄まったことで、研究活動が通常に戻りつつあったことは要因の1つだろう。ただ、大学や学部、研究室によって格差が生じているのも事実だ。

(出所)全国大学生協連 院生生活実態調査2022年調べ (単位 円)

3点目は奨学金の返済負担。返済が必要な貸与型と、返済がいらない給付型を含めた受給率は38.7%と4割近い。貸与型奨学金を受給している割合は、自宅生よりも下宿生や寮生の方が高くなっている。

また、別の調査では、大学院生が多額の借入金を抱えている実態も明らかになった。文部科学省科学技術・学術政策研究所による「博士人材追跡調査」では、2021年度に修士課程を修了した人を調べたところ、返済義務のある奨学金や借入金を抱えている人の割合は33.7%と、全体の約3分の1を占めた。

さらに、借入金がある人のうち、総額が「300万円以上」と答えた人が45.2%にのぼった。高額な借入金を抱えている人が、一定数存在しているのだ。

実は、返済不要である給付型の奨学金を受給できる大学院生はもともと少ない。なぜなら、大学院生の大半が利用する日本学生支援機構の大学院生向け奨学金には給付型がないからだ。また、家庭の所得金額に応じて授業料の減免などを行う高等教育の修学支援制度も、大学院生は対象になっていない。学部から大学院にかけて多額の学費が必要になるにもかかわらず、大学院生への経済的支援は乏しいのが現状だ。

次ページ進路や就活の状況は?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT