では、全国で大学院に進学している割合はどれくらいなのか。文部科学省が実施した2022年の学校基本調査によると、大学の学部から大学院等への進学率は12.4%だった。前年よりも0.6ポイント上昇しているものの、2010年度の15.9%をピークに減少傾向が続いている。
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また、修士課程から博士課程に進学する割合は10.3%。16.9%だった1994年度以降、長期的に減少傾向が続いており、近年は10%前後で推移している。
修士課程や博士課程に進学する学生数が低迷していることは間違いない。
大学院重点化政策の失敗
日本では1990年代から国の研究力を一段と高めるため、大学院重点化政策が実施されたことで、大学院が増設され、大学院生は急増した。博士課程の入学者(修士からの進学と社会人の進学)は、1992年度まで1万人以下だったのが急増して、2003年度には1万8000人を超えた。
ところが、博士課程で学ぶ大学院生の増加は、結果的に博士号取得者の”供給過剰”につながった。就職先がない、もしくは正規の教員になれない人が続出し、任期付きの研究職で働くポスドクが増えて、いわゆる「高学歴ワーキングプア」を生み出した。政策によって大学院生を増やしたにもかかわらず、受け皿が用意されなかったのだ。
しかも、他の先進国が大学の論文数を増やす中で、日本の論文数は増えなかった。国際的なシェアが低下し、研究力が低下したと言われるようになった。大学院重点化政策は「失敗した」と指摘されることが一般的だ。博士課程に進む人は2003年度をピークに減少し、現在の博士課程入学者は毎年1万4000人程度で推移している。
政府は現在、国の成長とイノベーションの創出を目的に「大学の研究力強化」を掲げている。目玉政策の1つが、10兆円に及ぶ大学ファンドの運用益を数大学に配分する「国際卓越研究大学」の選定だ。10大学が応募して、現在東京大学・京都大学・東北大学に絞られている。
このほかにも研究力の強化につながる事業や、若手研究者の支援策について検討されている。しかし、現在進めている政策が、大学院生の増加につながるかどうかは見通せていない。
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