次に、修士課程の大学院生が考えている進路について見ていきたい。「全国院生生活実態調査」では文科系、理工系、医歯薬系それぞれの進路を調査している。
文科系では就職が69.4%、進学が14.1%だった。進学を選ぶ割合は文科系が最も高い。理工系は就職が91.5%を占めていて、進学は5.5%と割合は低い。医歯薬系は就職が80.2%、進学が13.0%だった。
就職に関しては、就職活動が長期化していることがわかった。活動期間が6~12カ月と答えた人は28.0%で、前回調査よりも3.6ポイント、前々回より7.1ポイント増加した。さらに、12~18カ月が5.0%、18カ月以上も0.7%いる。
就職活動をめぐる状況は自由記述の回答から読み取ることができる。
回答にもあるように、インターンや就職選考の早期化が、研究活動など学業を圧迫している傾向が強まっているようだ。また、文科系については、大学院への進学が就職に有利になると答えた人が少なかったという。
修士号や博士号が企業で評価されない
全国大学生協連全国院生委員会で調査の分析を担当した、長崎県立大学大学院修士課程2年に在籍する松田あすかさんは、次のように指摘する。
「海外は文科系の大学院進学にとても大きな価値づけがされているが、日本の企業は残念ながらそうではない。一般企業の多くは大学院の教育に対する認識があまりされておらず、修士号もしくは博士号を取得している学生を特別に評価することがあまりない。そのうえ、博士号を取得していた学生は、年齢や賃金の差別化などの理由からイメージがマイナスになってしまうこともあるようだ」
博士号を取得した院生には、本来であれば新卒であっても学部卒よりも高い賃金が支払われるべきだが、それを嫌がる企業や賃金体系を作っていない企業などが、採用を避けるケースもあるようだ。
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