やっぱり「生成AI」という言葉はやめたほうがいい 「対話型AI」は半導体の未来を切り開くのか

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ところがご案内のとおり、日本の半導体メーカーの天下は1990年代にひっくり返る。メインフレームと呼ばれる大型コンピュータの時代が終わり、パソコンの時代に突入したからだ。

時代は「コモディティ化したスマホ」の次へ

代わりに覇権を握ったのは、マイクロソフトのWindowsと「インテル入ってる」のアメリカ企業コンビであった。当時は「ウィンテル」などと呼ばれていましたなぁ。こんなふうに、覇者がどんどん入れ替わるのが半導体の歴史なのである。

21世紀になってからは、半導体需要は「PCからスマホへ」と変貌を遂げる。アップルが初めてiPhoneを作ったのが2007年のこと。翌年にはリーマンショックが発生し、慌てて各社は投資を抑制する。ところが台湾のTSMCでは、創業者のモリス・チャンが社長に復帰し、スマートフォン用半導体の開発に大号令をかけていた。

アップルという顧客は、2年ごとに新型iPhoneを世に送り出す。そのためにはより高性能なチップが必要になり、その開発は困難を極める。

しかるにアップルは、開発コストを十分に回収できる価格を提示してくれる。ゆえにTSMCは遠慮なく、巨額の開発投資を続けることができた。今や半導体の微細化技術で同社は独走状態であり、日本政府が補助金を出し、「三顧の礼」で迎えて、熊本県の新工場建設が進んでいることはご案内のとおりである。

スマホが誕生してから、すでに15年以上が過ぎた。今や誰が見てもスマホはコモディティ化しているし、新機能も出尽くしている。この先、新たなiPhoneができたところで、飛びつく人は少ないだろう。

アップルもその辺のことは承知していて、今月になって「仮想現実」(VR)と「拡張現実」(AR)を組み合わせた複合現実(MR)とディスプレーを備えた新型ゴーグルを売り出している。とはいえ、日本円で49万円の「Apple Vision Pro」をどれだけの人が買うだろうか。

それよりはやはり、「2020年代の半導体市場は対話型AIが切り開く」と考えるほうが自然であろう。もっともこの先には、「ChatGPTでいかに収益モデルを作るか」や「今後の規制論議の高まり」などの課題が付きまとうことになる。

ゴールドラッシュの到来により、「金鉱掘り」が大金持ちになれるかどうかはわからないが、「ピッケルとシャベルの行商人は確実に儲かる」(The Economist誌)と考えるのが妥当な線であろう。

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