「技術革新はすばらしい」と考えるのは大間違いだ 人類は自ら嬉々として「滅亡の道」を歩んでいる

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技術革新は爆発的な勢いで進んでいる。だが「すべてすばらしい」とはとても言えないはずだ(写真:ブルームバーグ)

技術革新およびイノベーションはすばらしい。今の世の中、これに疑問を持つ人はいないだろう。

しかし、それは間違いだ。

イノベーションには「良いイノベーション」と「悪いイノベーション」がある。私はずっとそう主張してきたが、誰も聞く耳を持たなかった。それが、この5月から変わろうとしている。

技術進歩が社会にプラスになるためには?

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

というのも、現在、世界で最も精力的に論文・著作を生産し、最も影響力のある経済学者であるダロン・アシモグル(Daron Acemoglu)が、技術革新に対する無批判な礼賛に疑問を投げかけた著作『Power and Progress:Our thousand-year struggle over Technology and Prosperity』が5月16日に発売されたからである。

日本では、英語版ですら5月中の入手は難しいと判明し、アメリカから特急便で取り寄せた。また、生まれて初めて有料で電子書籍を購入した。

その結果は、大きな失望だった。彼の主張はおおむね以下のとおりである。技術の進歩はすばらしい。人類社会を変える。しかし、それは格差を拡大したり、雇用を減らしたりしてしまうこともある。社会がよくなる技術進歩と、そうでないものとがある。

支配者、独占者、エリートの自己利益のためにしかならない技術進歩がある。労働者を代替するオートメーションは、雇用をただ減らすが、一方で、ある特定の仕事は減らすが、別のさまざまな雇用を大幅に増やし、雇用の総数を増やす技術進歩もある。

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