「技術革新はすばらしい」と考えるのは大間違いだ 人類は自ら嬉々として「滅亡の道」を歩んでいる

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5月末に行われる、すべての3歳牡馬が目指すダービーの18枠に入るために「どのレースを使うか」「どこで賞金を獲得して出走条件をクリアするか」などと、それこそ調教師もオーナーも、そして外野も喧々諤々、ネットの掲示板などは毎週、調教師や騎手を攻撃する書き込みであふれる。

まさに2歳時の秋には、スタートで出遅れるなど「ほんの1つのボタンのかけ違い」によって、最後は追い込んでいちばん強いレースをしたのに、結局は3着となったレースがあった。

「1着じゃなかったけど、3着なら馬券を買っていれば3連単や3連複などの馬券になってよかったじゃん」とか「次は勝つんじゃん?」というだけのことなのだが、そうではない。基本的には、勝ってより大きなレースに出るために賞金を加算できないと、調教師や騎手への罵倒が殺到する。

なぜなら、次に使うレースが限られるからだ。コンディションを整えるためにレース間隔を少し空けて、などと悠長なことを言っている場合でない。「とにかく賞金を加算しろ」「まず2勝目」など、野次馬たちも交えて勝手な戦略を騒ぎ立てる。

実際、3歳5月末のダービーでの出走枠を得ること以前に、2歳の冬を無事に越して、春シーズンまでに故障もせず、調子落ちもせず、レースを使えること、それだけでハラハラドキドキ、奇跡の連続なのだ。

ダービーはすばらしいレースを期待

ということで、28日は馬券のことなどまったく考えられない。レースとしては、ソールオリエンス(3枠5番)、スキルヴィング(1枠2番)の2頭が抜けているとみられるが、そのほかの馬は横一線、実力伯仲だ。もし馬主でなく、外野の立場だったら、「今年はどんぐりだな」とか偉そうに言っていただろう。

とにかく、18頭すべての馬が無事に出走し、無事にレースを終えることを望みたい。すべての生産者、調教師、厩務員、そのほかスタッフ、関係者、そして無事にレースを施行してくださるJRA(日本中央競馬会)、その他すべての方々に、敬意と感謝を伝えたい。すばらしいレースを期待する。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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