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「技術革新はすばらしい」と考えるのは大間違いだ 人類は自ら嬉々として「滅亡の道」を歩んでいる

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  • 小幡 績 慶応義塾大学大学院教授
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この行き着く先は、自分の気持ちもわからなくなってくるということだ。昨今、若者のボキャブラリー不足が指摘されることがある。なんでも「神」になってしまう。しかし、これは語彙力の問題ではなく、感情そのものの問題である。

感覚が鈍くなっているために、出来の悪い原始的なAIのように、単純なパターン認識しかできず、自分で自分の感情がわからないから、数個のパターンに当てはめる。そして、これまでにない自分の心の動きを発見すると、戸惑い、それにふたをして、既存のパターンに逃げ込むか、パニックになってしまう。

しかし、これは現在の日本の若者に限った話ではない。人類の誕生から、いや人類がある程度「進歩」してからは、人類は動物としての感覚、感性、能力をずっと失い続けているのだ。

言語の発明は「人類が人類たるゆえん」とされることが多い。だがその結果、言語に頼らなくては人間同士で意思疎通ができなくなってしまった。言葉にしないとわからなくなってしまったのである。

AIによって思考を放棄、自ら滅亡の道を歩む

だから、動物の集団としては極めて能力の低い集団になってしまった。協力ということも、動物たちは本能的にできるのに、人類は契約やインセンティブに基づかないと行えなくなってしまったのである。

道具の発明により素手や素足の能力は衰え、車が発達したことにより脚力は落ち、機械の発明により職人の技術レベルは低下してきた。コンピューターの発達により、ブラックボックスとつき合うことに危機感を抱かなくなり、1人では何もできないことになってしまった。

そして、いよいよAIによって、思考することを自ら放棄することによる快楽と利便性に身を委ね、自ら滅亡の道を歩むことに嬉々として群がっている。

カーボンプレートなしではマラソンを走れなくなったわれわれは、裸足で金メダルをとったアベベ・ビキラ選手から100年も経たない間に、動物としての能力を誰がどう見ても大きく低下させているのであり、今や地球上で最も弱い動物になっているのである。

しかも、その弱い人間という動物が、ほかのすべての生物を支配している(という錯覚に陥っている)ため、ほかの生物の環境を壊し、自らも持続不可能になろうとしている。新種の感染症の頻繁な流行も、ほかの生物の環境を破壊したことから来ているが、これを自ら止めることはできない。技術「進歩」を止めることができないように、膨張を止めることはできない。

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【「技術革命は善だ」とはとても言えない】

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