ところが現在、アメリカと中国が安全保障上の理由から、それぞれ自前の半導体供給網を構築しようとしている。日本はアメリカ側につき、7月からは半導体製造装置の対中輸出制限に踏み出す予定だ。台湾や韓国の半導体メーカーも、巨額の対米投資に踏み切っている。
グローバリズムはほぼ死んだ
昨年12月、アリゾナ州での最新鋭工場の起工式において、TSMC創業者のモリス・チャンはこう語ったという。「グローバリズムはほぼ死んだ。自由貿易もほぼ死んだ。多くの人がまた復活すると願っているが、私はそうなるとは思わない」。
今後、技術革新の速度は低下し、「ムーアの法則」は限界に達するのではないだろうか。半導体産業には、「対話型AI」の発展による新たな地平線が見えてきた一方で、「経済安全保障」に伴う弊害も気になるところだ。重要な岐路に立っていることになる。
最後にひと言。半導体の歴史は需要家の動向、とくにアメリカ企業がカギを握ってきた。昨今の日本でも「戦略的資源」である半導体の国内生産を求める声は多いが、ポイントはいかに需要を生み出せるかであろう。
北海道で進行中のラピダス社の巨額投資にしても、「そこで最先端半導体が生み出されるにせよ、それをいったい誰が使ってくれるのか」が見通せない。
日本企業は1990年代以来の技術至上主義、プロダクトアウトの発想から抜け切れていないのではないか。たぶん壮大なる失敗劇に終わるのだろうなぁ、と思われて仕方がない。
(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)
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