アップルが6月5日に複合現実(MR)ヘッドセット「Vision Pro(ビジョン・プロ)」を発表したとき、最初に思ったことの1つを打ち明けよう。それは、「うわ、変な形だな」というものだ。
そう思ったのは私だけではなかった。ソーシャルメディアでも、ビジョン・プロに対する反応は芳しくなかった。懐疑的な人々は、スノーボードのゴーグルを思わせる見た目や、3500ドル(日本円換算で50万円弱)という法外な価格、そして「空間コンピューティング」時代の到来を告げるアップルの崇高な宣伝文句をあざ笑った。
VRに懐疑的だった私が考えを改めた
私は以前から仮想現実(VR)に懐疑的だ。5日の発表前に、アップルのMRヘッドセットについて、初代iPhoneの登場に匹敵するほどの、極めて重要なプラットフォームシフトの始まりを示すものだと思うかどうかと聞かれたら、「ノー」と答えていたに違いない。
だが、アップルが5日に行ったビジョン・プロのデモを見て、そして、このデバイスを実際に試した人々の概ね好意的なレビューを読んで、これは大きな出来事なのかもしれないと思うようになった。ビジョン・プロはひょっとすると、時代を変える新しいコンピューティング・プラットフォームを示唆する、初めての製品なのかもしれない。
ビジョン・プロが大失敗に終わる可能性を示す理由はたくさんある。高価すぎるし、見た目も悪い。それに、ほかのデバイスとあまりにもかけ離れている。良質で便利なアプリの開発を促すにしても、ストラップで頭に固定しなければならず、しかもまともに普及していないデバイス用のアプリより、スマートフォンアプリの方がよほど簡単だ。そしてアップルは、メタがこれまで生産性向上VRアプリへの進出で学んできたことに、あらためて気づかされるかもしれない。VRでメールを読むことに興味を持つ人は世界にそれほど多くはいない、ということだ。