アップル「新型ゴーグル」実はヤバいかもしれない いつも予想を裏切ってくるのがアップル

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ところが、私はアップルがアップルであるゆえんを思い出すのを怠っていた。オタク向けのニッチな製品を、意志の力によって、誰もが欲しがるものに変えられるということを繰り返し証明してきたのがアップルだ。

それこそが、アップルの有名な製品と優れたマーケティング力の証しであり、私がビジョン・プロの可能性を否定しきれない理由の1つだ。

人間の考えはつねに変化する

確かに、世の中には良いVR/MRヘッドセットが存在するし、よくできたアプリもいくつかある。ただし、それらのヘッドセットはアップルがつくったものではなく、ビジョン・プロのようにアップルのエコシステム全体にシームレスに統合されたものではない。

iPhoneの連絡先、iMessage、iOSの設定がすべて、電源を入れた瞬間からMRヘッドセットに統合されるという事実は、毎日実際に使われるデバイスと、数週間後にはクローゼットの肥やしとなる目新しいおもちゃとの分かれ目となりうる。

2013年に私がアップルウォッチについて犯したもう1つの過ちは、人間の行動は固定されていないということを忘れていたことだ。何がファッショナブルで、何が社会的に受け入れられるのか。そうしたことについての私たちの考えは、新たなテクノロジーに対応して常に変化する。

当時の私の反応の基盤となっていたものの1つは、そうした社会的な規範だった。そのときはまだ、会議中や家族との食事中に腕時計をのぞくのは失礼と考えられてもおかしくなかった。しかし、10年が経ち、そのような行為はもはや不適切とは見なされなくなっている(少なくとも私にとっては)。なぜなら、非常に多くの人がアップルウォッチを持つようになり、それに関連して新たな規範が出来上がったためだ。

現在、私たちは、食事中に腕時計をチェックする人を見ても、かばんやポケットから携帯電話を取り出すのを避けようとしているのだろうと考える。携帯電話を取り出すほうがより失礼で、一段と場を乱す行為となるからだ。つまり、大規模な普及がタブーを過去のものにしたのである。

同じことは、MRヘッドセットでも起こりうる。確かに、今この時点でビジョン・プロを身につけるのは照れくさいかもしれない。だが、今から数年後、もし同僚の3分の1がヘッドセットを使ってZoom会議に参加するようになったり、飛行機に乗るたびに乗客がVR映画を観ているのを見かけるようになったりすれば、ヘッドセットを身につけることはそれほどおかしなこととは感じられなくなるだろう。

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