日経平均株価、大台3万円超えの先の先を読む 続伸か暴落か、ストラテジスト2人が大胆予想

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順に見ていこう。①「円安は輸出企業の収益を支える」というが、日本からの輸出数量は4月まで前年比7カ月連続の減少だ。これは海外景気悪化による需要減だろう。輸出金額も4月分はわずか2.6%増。円安で何とか息継ぎをしているにすぎない。しかも中国向けは前年比5カ月連続マイナスで、ゼロコロナ政策解除後も同国経済は不振が続く。

馬渕治好(まぶち・はるよし)/ブーケ・ド・フルーレット 代表。米CFA協会認定証券アナリスト。1981年東京大学理学部数学科卒業、88年米マサチューセッツ工科大学経営科学大学院修士課程修了。旧日興証券グループで主に調査部門に所属。日興コーディアル証券国際市場分析部長を経て、2009年1月独立。

②はすでに存在しており、新たな材料ではない。③は「バフェット効果で海外投資家が買い出動している」というが、同氏がこれから日本株を本格的に買うかどうかは保証の限りではない。ただし、バフェット氏の発言を「ネタ」と割り切って買いを入れている短期筋は多いと推察される。

④についても、日本株の経験が長い海外長期投資家たちからは、「言われて改革できるならとっくに改革しているはず」との正当で冷静な見解が聞こえる。足元は自己株買いなどによるROE引き上げの動きが広がるが、「余剰資金抱え込み」という最悪の経営を続けてきた日本企業が一部を株主に還元しているにすぎない。「手元の現金を優れた投資機会に充て、長期での高い利益成長で株主に報いる」というのが株価を上げる企業経営のはずだが、どれほどの日本企業がそこまでの経営改革に踏み切れるだろうか。

リーマン級の暴落はない

このように現在の日本株の買い材料とされているものを並べると、ことごとく「砂上の楼閣」に見える。今後は「日本株の正常化」という名の「短期株価下落」の局面が訪れそうだ。

ただし、日本株の下落は「リーマンショック」や「コロナショック」のような暴落にはなるまい。日本経済にはインバウンド消費の拡大や国内の人流の回復など、底堅さを期待させる材料が多い。むしろ悪材料は海外からやってくる。欧米では景気を犠牲にしてでもインフレを抑え込もうとの金融政策が継続。また中国も、前述のように景気悪化がうかがえる。これらが経済面から日本を圧迫し、今後海外株安と外貨安・円高が並行して日本株を押し下げるだろう。

今後訪れるのはよくある「普通の景気悪化による普通の株価下落」にすぎない。日経平均の今年の最安値は、年央から夏場にかけての2万7000円程度と見込む。その後、今年末、さらに来年に向けては、世界経済の持ち直しに沿った世界的な株価上昇の流れの中に、日本株を位置づけてよい。それは、インフレ率が緩やかながら低下を続け、一方で景気悪化が深刻化すれば、米国などの主要国で再度の金融緩和が行われると予想するからだ。これが日経平均も下支えする形で、今年末までに再度3万円の大台を奪回するだろう。

林 哲矢 東洋経済 記者

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はやし てつや / Tetsuya Hayashi

日本経済新聞の記者を経て、ハーバード大学(ケネディスクール)で修士号。『週刊東洋経済』副編集長の後、『米国会社四季報』編集長。

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福井 純 「会社四季報オンライン」編集部長

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ふくい・じゅん / Jun Fukui

『会社四季報プロ500』編集長などを経て現職。『株式ウイークリー』編集長兼任。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本テクニカルアナリスト協会理事

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