見積もりは、片付けの規模と、いるモノとゴミの仕分けがどの程度あるのか、そして依頼主が現在何に困っているのかを知るためにある。見積もりにかかる時間は、30分から1時間程度。この依頼主の場合、3日後に迫る退去日までに家の中を空っぽにする必要があった。片付けの内容や物件の性質によって変わるが、この案件で男性が支払った額は約32万円だった。決して安くはないが、この内容やゴミの量を考えると高くもない。
「引っ越しなど、ゴール地点がハッキリと見えていれば片付けはあっという間に進んでいきます。でも中には『片付けなきゃ』と漠然とした悩みを抱えて連絡をくださる方もいます。そのときは『この部屋をどうしたいか』を一緒に話し合って、ゴール地点を設定するようにしています」
ゴミ屋敷の片付け“その裏側”
片付けの当日、まずは依頼主から聞き取った“いるモノ”をスタッフに共有する。今回は男性の趣味である「付録や景品」、そして「本」は捨てずにとっておくことになった。本は人から借りているモノもあるため、後で依頼主が1つひとつ仕分けしたいという。雑誌や新聞はすべて捨てていいと希望を話した。
まずは玄関にあるゴミを袋に詰めて外に出し、動線を確保する。その後、各部屋からもゴミを外に出していく。燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミなど、ゴミの分別もこのとき部屋の中で行う。
床が見えるようになると、散乱した小銭が目立つようになってきた。紙幣が入った封筒もザクザク出てきた。昔、一緒に住んでいたと思われる女性の靴も出てきた。消費期限が15年前の飲み物もある。ゴミの山の底のほうに眠る新聞にはかなり昔の日付が記されており、ゴミ屋敷全体が地層のように部屋の歴史を物語っていた。
外に出されたゴミたちは、外部委託しているパッカー車でごみ収集場へと運ばれていく。この際、もっとも気を付けなければならないのは、「スプレー・乾電池・ライター」をゴミの中に絶対に紛れさせないことだ。
「パッカー車の中で引火し、爆発してしまう恐れがあるためです。部屋の中で30缶ほどスプレーのガス抜きをした後に電気を点けたら、その電気に引火して爆発したといった事例もあるほどです」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら