バッタの食欲を調べ尽くした科学者が達した答え 「タンパク質欲しさ」に共食いすらしてしまう

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これが「密度依存的な相変異」と呼ばれる現象であり、スティーヴの研究グループが長年かけて理解しようとしていたことだった。

私たちは当初、次の疑問をもっていた。

群れの中にいることの何が相変異を引き起こすのだろう?ほかのバッタからのどんな刺激が、変異の引き金を引くのだろう? ほかのバッタの姿を見ることなのか、匂いなのか、音なのか?

私たちが発見したカギは、「接触」だった。食用に適した植物の量が限られているとき、孤独相のバッタは望む以上にほかのバッタに近い場所で餌を探さざるを得なくなる。

集まったバッタは押し合いへし合いになり、この物理的接触が、反発から引き寄せへの変異を引き起こすのだ。

いったん十分な数の社交的なバッタが集まると、突然、まるで心が1つになったかのように、集団全体が見事に統制の取れた動きを見せ、隊列行進を始める。

行進を開始するという集団的決定が、群れ内の近くのバッタとの単純接触によって生まれることを、スティーヴたちは明らかにした。いいかえれば、バッタにはリーダーも階層的な統制もない。それなのになぜ行進が起こるかといえば、すべてのバッタが「まわりのバッタの動きに合わせる」という、同じ単純なルールに従うからだ。

バッタの群れはいったん臨界密度に達すると、それより1、2匹増えただけで、突如として集団的な、統制の取れた動きを取るようになる。そして恐怖の行進が始まる。

もちろん、私たちはなぜバッタが「まわりのバッタの動きに合わせる」という単純なルールに従うのかを、まだ理解していなかった。ただ、もしかすると、「栄養」が関係しているのではないかと推測していた。

この謎が解けたのは、バッタの類似種であるモルモンコオロギを研究していたときのことだ。しかも、その背後にはおどろおどろしい動機があった。

草食のコオロギが「共食い」を始めた

モルモンコオロギは、飛べない大型の昆虫で、アメリカ南西部に生息し、何キロも続く群れで行進する。1848年にユタ北部のソルトレイクに到達したモルモン教徒の開拓者の初めての収穫を壊滅させようとしたことから、この名がついた。

人々はこの破壊になすすべもなく、飢え死にしかけたそのとき、カモメの群れが飛来し、コオロギを全滅させて窮地を救った。今ではソルトレイク寺院にこのできごとを記念する碑がある。カモメはユタ州の州鳥にもなっている。

この頃スティーヴはユタ州にいて、研究仲間のグレッグ・ソード、パット・ローチ、イアン・クーザンとともに、モルモンコオロギの群れを調べていた。動きを合わせて行進を始めるという、突然の決定の背後にある理由を発見したのは、このときである。

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