第2回:バッタの食欲を調べ尽くした科学者が達した答え(6月9日配信)
第3回:カロリーばかり気にする人が知らない栄養の全貌(6月16日配信)
第4回:食事の栄養バランスが心配な人に伝えたい極意(6月23日配信)
発表を妨げられるほど「間違い」を指摘した論文
国連食糧農業機関(FAO)の栄養素利用可能性(栄養摂取とまったく同じではないが、十分近い)に関するデータベースによれば、1961年から2000年にかけて、アメリカの平均的な食事組成は重要な変化を遂げ、タンパク質比率は14%から12.5%に低下した。
その分上昇したのはもちろん、脂肪と炭水化物だ。
アメリカ人は、このタンパク質比率の低下した食事でタンパク質の摂取ターゲットを達成するには、総摂取カロリーを14%増やすしかなかった。そしてその結果が、エネルギー(カロリー)余剰と、ひいては体重増加である。
誰も注意を払っていなかったが、ここ数十年間の動きをひとことでいえばそうなる。
私たちはスイス山小屋研究(人間を山小屋に缶詰にして行われた実験)の結果をまとめて2003年に発表し、それから第二版の草案を書き始めたが、それが発表されるまで2年もかかった。題して「肥満:タンパク質レバレッジ仮説」である。どちらの論文も、人間栄養学の分野に波紋とためらいをもって迎えられた。
スティーヴは2005年にケンブリッジ大学で講演を行った際、その後の夕食会の席で、この分野の重鎮に打ち明けられた。彼はタンパク質レバレッジ仮説の論文が発表にこぎ着ける前の審査段階で、審査を引き延ばしたというのだ。
なぜそんなことをしたのだろう? 彼はこう言った。あなたたちはおそらく正しいのだろうが、私のような人間栄養学の分野の研究者にとって、これほど明白に思われることを見落とし、しかも2人の昆虫学者に先を越されたことが、どんなにつらかったかをわかってほしいと。