カロリーは「とても変わった単位」である
栄養はとてつもなく複雑なテーマだから、まずは簡単な問いから考えよう。なぜ食べる必要があるのだろう?
今日、食べ物に混乱や不安を感じている人は多い。これはとても残念なことだ。本来食べ物はまたとない恵みを与えてくれるものだ。食事は大きな楽しみであるとともに、生命そのものの燃料でもある。
私たちが食べ物から得る必要があるもののなかで、最もなじみ深いのは「エネルギー」だ。食品のパッケージや、最近では飲食店のメニューにまでくまなく書かれた数字――どれだけのエネルギーを含むかという数字の羅列と、それをどれだけ食べるべきかを示す厳格な栄養ガイドライン――を見ない日はない。
もちろん、ラベルには「エネルギー」という言葉は使われていない。たぶん、「カロリー」という言葉のほうがなじみ深いだろう。
だがカロリーとはいったい何なのか?
カロリーはただのエネルギーの単位だ。1キロカロリーは、摂氏14.5度の水1キロ(1リットル)を15.5度まで1度上げるのに必要な熱量をいう。とても変わった尺度だ――お風呂を温めるのにどれだけの食品が必要かなどと考えたことがある人は別だが。
それでも、この単位は厳密に正確であり、だからこそ私たち科学者は好んで使う。そんなわけで、イメージしづらいという難はあるが、誰もが食べ物をカロリーで考えるようになっている。
さらにややこしいことに、カロリーは一般に「キロ」カロリー(kcal)の単位で表される。昔は大文字から始まるCalと小文字から始まるcal(1Cal=1000cal)の表記があったが、紛らわしいから前者をキロカロリーと呼ぶようになった。