第2回:バッタの食欲を調べ尽くした科学者が達した答え(6月9日配信)
第3回:カロリーばかり気にする人が知らない栄養の全貌(6月16日配信)
味は「栄養の種類」を示す
食欲を理解するうえでまず注目すべきは、私たちの食べるすべてのものに、自然がそれぞれまったく異なる味や風味を与えたということだ。
たとえば人間にとって、焼けた肉の塊は一握りのベリーとはまるで味が違うし、ベリーはみずみずしい濃緑色の葉とも違う味がする。
これほどの多様性は、偶然ではあり得ないし、また食事中に私たちを飽きさせないために多様な風味が存在するわけでもない(その働きはたしかにあるが)。
こうした特徴的な風味は、食品中の化学成分、すなわち栄養素を指し示しているのだ。
タンパク質、脂肪、炭水化物が、エネルギーを供給し、そのほかの重要な機能を果たすうえで、それぞれ異なる役割と意味をもっていることを考えれば、それらを判別し、食品に含まれているかどうかを知る能力を、自然が私たちに授けたことはなんら不思議ではない。
この能力はあって当たり前のように考えられているが、これがなければ誰一人として今この世に存在していない。この能力があるからこそ、私たちはどの栄養素がどの食品に含まれているか、何を食べるべきか、避けるべきかを知ることができる。
私たちは適切な食べ物を探す必要性があるからこそ、糖に心地よい甘みを感じ、タンパク質豊富な食品にあの舌鼓を打つようなおいしさ、日本人のいう「旨み」を感じ、脂肪にコクのあるバターのような食感と風味を感じるのだ。
この能力がなければ、いったいどうやって栄養素を区別できるというのか?
主要栄養素を味で判別できるのは、もちろん動物界でヒトだけではない。また一部の動物は意外な場所に味覚器をもっている。