確かに求人は労働市場において減速しているが、対人サービス業を中心に、人手不足感は依然強い。労働市場の底堅さが、信用収縮がもたらす景気下押し圧力を相応に吸収する、と筆者は考えている。そうであれば、銀行不安によって景気減速の兆候がみられても、FRBが早期に利下げに転じる可能性は高くないだろう。金融危機を伴うような大幅な経済の落ち込みでなければ、政策金利をしばらく据え置く可能性が高い。
もしこの見立てが正しければ、3月の銀行破綻の報道の後に、早期利下げ期待から大きく下げたままで推移しているアメリカの長期金利は、いったん上昇する場面があってもおかしくない。
今後は予想外にドル高円安が進む可能性も
なお、ドル円相場については、植田和男総裁の下で初となった日銀の金融政策決定会合(4月27~28日開催)の結果が「ハト派的」と受け止められ、ドル高円安方向に動く場面があった。
植田総裁の会見では、前任の黒田東彦総裁体制時と同様の発言が目立った。例えば金融政策の見直しについて問われた際に「金融引き締めが遅れて2%を超えるインフレ率が持続するリスクより、拙速な引き締めで2%の物価安定目標を実現できなくなるリスクの方が大きい」と発言した部分などである。
植田総裁が「2023年度後半にはインフレ率がいったん2%を下回る」と述べているが、日銀がこの見通しの行方を見定めてから動くということならば、政策変更は今年の年末まで後ずれする可能性もありうる。
このまま、日銀が緩和修正に対して慎重に臨むなら、当面日本側の要因でドル安円高が進む可能性は低いだろう。先述したとおり、仮にアメリカの金利に上昇余地があるとすれば、今後は予想外にドル高円安が進む可能性がある。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら