まずは5月3日に結果が判明したアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)から振り返って見たい。
FRB(連邦準備制度理事会)は、市場の予想通りに0.25%(25ベーシスポイント)の利上げを行い、政策金利を5.25%(上限)まで引き上げた。
アメリカの「インフレ率2%回帰」には時間がかかりそう
だが、声明文では、利上げを継続する方針が、以前よりも弱められる方向で書き換えられていた。ジェローム・パウエルFRB議長は記者会見で、現在の政策金利が「十分引き締め的な水準」に近づいている可能性に言及するなど、政策姿勢は変わりつつある。
もちろん、FRBは「利上げ」か「金利据え置き」の判断について、その時々で行うフリーハンドはまだ残している。ただ、パウエル議長を含めて、多くの政策決定メンバーは、次回の6月会合(13~14日)では政策金利を据え置いて、これまでの利上げの引き締め効果を見定める局面に移りつつある、との判断に傾きつつある。
もっとも、政策姿勢の変更に際しては、「インフレリスクが低下した」など「明確な理由」を挙げることは難しい。5日に発表された4月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+25.3万人と、予想よりも上振れた。
アメリカで3月10日にSVB(シリコンバレーバンク)の破綻が起きた後も、FRBが目指すほど労働市場は減速していない。雇用統計の数字については特殊要因があり、テクニカル的に上振れている部分があるのだが、それを割り引いても労働市場の減速は起きておらず、FRBが目指す「2%インフレへの回帰」には相当距離がある。
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