アメリカの株価が大幅下落を免れそうな理由 雇用堅調でもFRBの利上げは6月以降打ち止めへ

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アメリカの金融当局は今後も難しい対応を迫られそうだ。だが、銀行破綻などがあっても同国の株価が今後も大幅な下落を免れそうな理由とは?(写真:ブルームバーグ)

アメリカでは3月10日前後の突然の銀行破綻によって、市場心理が一時急速に悪化した。銀行破綻から1カ月が経過したが、同国の代表的な指標であるS&P500種指数はすでに破綻前を上回る水準まで上昇するいっぽう、長期金利は低下している。当局の連鎖破綻を封じ込める一連の対応で、2008年時と同様の大型金融危機には至らないとの認識が広がりつつある。

アメリカの株高の真因は何か

懸念された中小銀行の預金減少は3月末までにはいったん収まり、預金流出に備えたFRB(連邦準備制度理事会)からの借り入れも増えておらず、銀行システムは落ち着きつつある。破綻直後の預金保護の徹底などの対応で、金融危機の最初の火消しには成功したと言える。

筆者も銀行破綻が発生した直後のコラム「アメリカ株が再び大きく下落する可能性はあるか」(3月16日配信)で、銀行不安はインフレ抑制をもたらす点を指摘したが、実際に金利の大幅な低下となって現れている。一方で、株価の反発は、銀行問題を楽観しているというよりも、金利低下によるハイテク株などの株高で説明できる部分が大きい。金利が低下しても株高につながらない値動きもみられ、同国経済が大きく失速するリスクが懸念されるなど、依然として不安定な状況にある。

今後は、銀行の信用仲介機能が引き締め的に作用するので、企業や家計の支出行動を抑制し経済成長率を低下させることになりそうだ。

こうしたショックが急激に経済全体に波及したのが2008年の金融危機だった。一方で、現在起きている銀行問題について、筆者は金融危機を招くほど深刻になる可能性は高くないと想定している。FRBの利上げが、リスクを積極的にとっていた一部の銀行の経営を揺るがしているが、これは利上げの引き締め効果が顕在化した事象と位置付けられるのではないか。

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