アメリカの株価が大幅下落を免れそうな理由 雇用堅調でもFRBの利上げは6月以降打ち止めへ

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今後はどうなるのか。FRBは次回5月2~3日のFOMC(連邦公開市場委員会)における利上げを続けるかどうか、難しい判断を迫られるだろう。

ただ、現在起きている「逃げ足の早い預金」に依存する銀行破綻がもたらす金融不安は、2008年時などとは異なるとFRBは判断するのではないか。
このため、経済過熱やインフレリスクが変わっていない中で、FRBは利上げを継続すると現時点では考えている。実際、4月上旬に発表された同国の経済指標は事前予想を下回るものが多かったものの、7日に発表された3月雇用者数は前月比23.6万人と堅調な数字だった。

同調査は「銀行破綻が起きた週」に行われたので銀行問題の雇用市場への悪影響をはかる指標にはならない。ただし2023年の1~2月は暖冬で大幅な雇用増となった直後ということもあり、その後に労働市場がどの程度底堅いかという意味で重要だったが、20万人以上の底堅い雇用拡大が示された形だ。

アメリカ経済は深刻な景気後退にはならない

同国では昨年末から大手ハイテク企業のリストラ報道が続いているものの、求人数は依然かなり多いため、企業全体として見れば雇用増加が続いている。

今後は労働市場も減速するとみられるが、高い求人数がある中で、雇用削減があっても労働市場での調整は深くならないと見る。筆者はこれが同国経済の深い景気後退が回避される1つの要因になると考えている。「労働市場は依然逼迫(ひっぱく)している」とするFRBの判断も変わらないだろう。

一方で同国の労働市場については、失業率が約3.5%前後と過去1年ほとんど変わっていない中で、昨年の平均時給が前年比5%台の上昇から2023年3月に同4.2%台まで低下していることをどう考えるかが、今後のFRBの政策判断に影響しそうだ。

失業率が極めて低い水準なら本来賃金は減速しないはずだ。だが、実際には過去1年賃金の伸びは鈍化している。この理由の1つは、失業率は低水準でも求人数自体は減少傾向にあるなど、労働需給逼迫が和らいでいることである。

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