日米の株価が今後も下落基調にあると見るワケ アメリカでは銀行不安とは関係なく消費が悪化

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FRBはアメリカの銀行破綻が起きたことで大規模な支援策を用意。だがそれとは別に、同国の経済はすでに悪化している(写真:ブルームバーグ)

前回のコラム「『盛りすぎた日本株上昇論』が行き詰まりそうだ」が掲載された3月13日以降、日米など主要国の株価調整が進んだ。

とくに日経平均株価については「9日までの『株価が上がる要因探し大会』は今後行き詰まり、日本株は下落色を鮮明にしていくと見込む」と述べたが、残念ながら見込んだとおりの展開となった。まさにこの9日が最近の日経平均のピークとなっている。

銀行不安がなければ株価は上がっていたのか

そうした株価推移について、「いや、この世界的な株価の波乱は、ひとえにシリコンバレーバンク(SVB)やクレディ・スイス・グループの苦境により、銀行経営への懸念が広がったことによるものだ。馬渕さんはこれらの銀行経営不安についてはまったく予想できていなかった。見通しがたまたま『まぐれ当たり』したにすぎないのではないか」といった意見もあるだろう。

もしそうした見解が正しければ「銀行経営に対する不安が生じなければ株価が上がったはずだ、これからもその不安が解消されれば株価は上昇色を鮮明にするはずだ」という結論となる。しかし筆者は、そうは考えていない。

まず、足元の金融業の不安は、リーマンショックとはまったく異なる。リーマンショックは「アメリカでは住宅価格が下がるはずがない」という「住宅神話」に基づいていた。幅広い銀行が通常の貸し出しに加え、サブプライムローンと呼ばれる、返済が危うい借り手向けの融資も大いに行ったことに起因する。

銀行側のもくろみは「もし借り手からの返済が滞っても、値上がりし続ける住宅を担保に押さえているのだから、最終的には融資は担保不動産の売却で回収できる」というところにあった。

ところが、実際には住宅バブルが崩壊して価格が下落し、住宅ローンの焦げ付きが全額は回収できなくなった。また、住宅ローンは証券化されて、多くの投資家が保有していた。このため、住宅ローン劣化の悪影響は、幅広い銀行と幅広い投資家に一斉に打撃を与え、金融不安を引き起こした。結果として、サブプライムローン問題の行く末が、市場の命運を一手に握ることとなった。

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