日米の株価が今後も下落基調にあると見るワケ アメリカでは銀行不安とは関係なく消費が悪化

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しかし足元の金融機関の経営不安は、個別性が高い。銀行は預金などの形で借りた資金を、融資に振り向けて儲けるというビジネスモデルだ。ただし、一部を証券投資などにも充てて利益を得るという形になる。

ところが、SVBは預金の多くを証券投資に回しており、同行の預証率、すなわち「証券投資額÷預金」は2022年12月期決算によれば67%と高率だ。しかも証券投資額のうち、満期まで保有することを前提とする債券投資が77%に達している。

アメリカの国債やエージェンシーMBS(公的性の高い住宅金融会社による住宅ローン担保証券)などは、デフォルト(債務不履行)は想定しがたく、満期まで保有すれば元利金が返ってくるため、安全だ。

ところが昨年来の金利上昇により、債券価格は下落している。これはSVBにとって含み損にすぎないので、売却しなければ損失にならないはずだが、SVBの主力顧客であるITやバイオなどの新興企業は、手元資金の必要性からこぞって預金を取り崩し始めた。

すると、SVBは手持ちの現金や短期証券だけでは対応しきれず、泣く泣く満期保有を前提にした債券を売って預金者に現金を渡さなければならなくなった。このため含み損が実現損となり、そうした損失発生が経営不安を呼んで、さらに預金の引き出しを招くという事態に陥った。

クレディ・スイスの危機も元は固有の事情による

スイスのクレディ・スイスの場合、もともとの不安の発端はアメリカのファミリー・ファンド(富裕層の個人的な金融資産を運用する法人)であるアルケゴス・キャピタル・マネジメントの破綻(2021年4月)により、50億スイスフラン(約7000億円)の損失を被ったことにあった。その後も何度も経営不振が取り沙汰され、株価は下落基調にあった。最近突然何か悪いことが起こった、というわけではない。

もちろん、不安を引き起こす引き金はあった。3月15日に、筆頭株主(保有比率9.9%)であるサウジ・ナショナル・バンクの会長が、追加投資を否定する発言を行ったことだ。ただ、クレディ・スイスの経営の劣化は、やはり同行特有の事情が大きい。

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