元商社マンが「ゲストハウス開業」で見つけた天職 理不尽に苦しんだ会社員から一転「掴んだ幸せ」

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会社を退職したあと関西に戻って土地探しを本格化させた。こだわったのは、観光地であること。観光や仕事を目的に訪れる人が多い土地であればあるほど、宿泊施設のニーズが高いと考えたからだ。

また当初は賃貸や既存物件の購入を考えたが、条件に合う物件を見つけるのは難しかった。そこで初期投資はかかるが自由度が高く、財産として残すこともできる、という理由から土地を購入し、ゲストハウス兼自宅を建てようと決めた。

会社を辞めた直後は正直、何から手をつけていいのかわからなかったが、まずは起業の基本を学ぶため商工会議所主催の起業塾に通った。小規模のビジネスとはいえ、家族の生活がかかっているので「ビジョンを持たないまま起業に踏み切るのは、私には無理でした。家族のことを思うとできる限りのことはしたかった」。

起業塾では業種は違えど、起業を志す仲間と知り合えたこともよかった。また簿記3級や姫路検定3級を取得し、知識の習得にも努めた。

思いのほかお金がかかってしまった

開業エリアの候補は神戸、有馬温泉、奈良、姫路など。行ってみて初めてわかるエリアの特性もあり、最終的には姫路にターゲットを絞った。旅館業で「簡易宿所」として認められるには、客室の延べ床面積が33平方メートル以上(ほかにも細かな規定あり)必要だ。

自宅も兼ねるので希望どおりの土地はなかなか見つからなかった。だが妥協はせず、土地探しと並行して旅館業法の理解、信用金庫での融資相談、保健所・消防局・市役所での確認、商工会議所での起業相談、備品のリストアップなど着々と準備を進めた。

ネットで調べられることも多いが、迷ったときはよく役所関係に足を運び、相談・確認をした。「素人なので、素直に聞きに行こう、と思っていました」。親切に書類を見てくれた人、ゲストハウスの開業を応援してくれた人。助けられた場面は何度もある。

シロノシタゲストハウスの外観(写真:城下智久さん提供)

こうして5カ所目にしてようやく見つかった土地は、姫路駅からは少し歩くが姫路城に近く、土地の大きさも希望に適うものだった。関係各所に連絡したあと、自治会長さんや近隣の方々へあいさつと事業説明に伺った。

きちんとした事業計画書を作っていたおかげで無事に信用金庫の融資も決まり、不動産会社やハウスメーカーと契約を結んだ。客室は相部屋と個室で合計5部屋を用意。12畳の共用スペースも設け、食事や談笑を楽しんでもらえるよう計画した。

姫路城までは徒歩約10分、外国人観光客の利用も多い(写真:城下智久さん提供)

だが建築費の予算オーバー、自動火災警報装置やバリアフリー対策などの設備投資で、思いのほかお金がかかってしまった。

「それこそ最初は一軒家を借り、リノベーションしてゲストハウスを運営しようと安易に考えていたんです。その後、土地を買って自宅兼ゲストハウスを建てようと決めたのは自分だけれど、正直、こんなにもお金がかかるのかと。もっとお金をしっかり貯めておけばよかったと思いました」

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