元商社マンが「ゲストハウス開業」で見つけた天職 理不尽に苦しんだ会社員から一転「掴んだ幸せ」

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HPの作成などできることは自分でやってコスト削減に努めつつ、兵庫県のUターン起業家向けの補助金を受けるなどして資金繰りにはなんとかメドをつけた。また素泊まりのゲストハウスが多い中、妻が食品衛生責任者の資格を取って朝食を出せるようにし、差別化をはかろうと考えた。

場所探し、お金の工面、クリアすべき法律や条例の数々など、ゲストハウス開業までの1年半の間に何度か心が折れそうになったのも事実。けれど大変なりに充実感はあった。それは会社員時代には得られなかったものだった。

ゲストハウスの醍醐味は共有スペースでのコミュニケーション(写真:城下智久さん提供)

2017年、無事に旅館業と飲食業の許可を経て、城下さんは46歳でゲストハウスのオーナーとなった。開業してみると、とくに外国人の旅行者は姫路城を目的に一定数いると目論んでいたが、予想以上に多かった。

また新築で清潔感があること、家族経営でアットホームな雰囲気だと口コミの評価が上がり、女性の一人客や家族連れにも安心して泊まってもらえたのがよかった。

コロナ禍にも負けず

だがコロナ禍が予想外の大打撃をもたらした。「誰が悪いわけでもないので、運命を受け入れるしかありませんでした」。感染者拡大につれ休業状態となり、補助金や支援金頼みの日々が続いた。それでも「何かできることを」と考え2020年春、姫路市のイメージキャラクター「しろまるひめ」をデザインした「姫路エールマスク」をガーゼで製作し、販売を始めた。

直接販売と通信販売で1700枚ほどを売り上げたが、やがて布マスクのニーズは減少。次に何をしようかを考えていたとき、寺院や神社で押印してもらう「御朱印」のように、地方鉄道の「鉄印」、お城の「御城印(ごじょういん)」なども存在すると知った。同様にゲストハウスなど宿泊施設で集める「御宿印(ごしゅくいん)」はどうだろう。

クラウドファンディングで資金を募り、作成した「御宿印帳」(写真:城下智久さん提供)

「御宿印帳をきっかけにゲストハウスの存在を多くの人に知ってもらい、コロナ禍が落ち着いたら実際に足を運んでもらいたい」。そう考え、知人のアドバイスを得て、御宿印帳の制作費をクラウドファンディングで集めることにした。

結果、242人から140万円以上の支援を得られた。このプロジェクトに賛同する宿泊施設は2021年5月には47都道府県すべてに拡大し、Facebook上でコミュニティーも生まれた。取り組みの様子は新聞やテレビでも取り上げられた。

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