イギリスが「トイレは男女別」を義務付けた理由 活発化するトランスジェンダーをめぐる議論
東京・新宿の「東急歌舞伎町タワー」の性別に関係なく利用できる「ジェンダーレストイレ」に対して、「女性が使いにくい」などの批判の声が上がっている。同施設は「SDGsの理念でもある『誰一人取り残さない』ことに配慮し、新宿歌舞伎町の多様性を認容する街づくりから、設置導入した」と理解を求めているが、性犯罪を懸念する向きや「いったい誰のためのトイレなのか」と批判は収まっていない。
一方、イギリスでは、2022年7月に政府が「新しく建設する公的建造物は男女別のトイレを設けることを義務付ける」と発表した。ジェンダーの議論では日本の先をいくイギリスが義務化に動いたのはなぜなのか。
「女性が安心できることは重要」
「トイレは男女別」と義務付けられているのは、人口の5分の4が住むイングランド地方。BBCによると、ケミ・バデノック女性・平等担当相は、義務化について「女性が安心できることは重要」「女性のニーズは尊重されるべき」と説明。さらに政府は「ジェンダーニュートラル(性的に中立)なトイレ」が増えることについて「女性が不利益を被る」と考える人がいるほか、トイレを待つ列が長くなることも理由に挙げている。
ニュートラルなトイレの場合、男性は個室と壁面に取り付けられた小便器を使うことができるが、女性が使えるのは個室のみ。「小便器の横を通らないと個室に行けないのが嫌だと感じている女性は少なくない」と女性団体が抗議したほか、生理や妊娠中など女性特有のニーズがあるため、政府は女性専用のトイレの確保を重要視した。
ガーディアン紙によると、同案は2021年5月に提案されたが、トランスジェンダーやノンバイナリージェンダー(自身の性自認が男女どちらにも当てはまらない、あるいは、当てはめたくない人)の人々の選択肢がなくなるとの批判が噴出。人権団体は、「トイレが男用と女用だけになってしまうと、どちらにも行けない人が出てきてしまう」と懸念を示した。
実際、男女のトイレのほかに、「ニュートラルなトイレ」も同時に義務付けて設置しないと、トランスの人の行き場所がなくなってしまいそうだ。
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