イギリスが「トイレは男女別」を義務付けた理由 活発化するトランスジェンダーをめぐる議論

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1月24日、ブライソンに有罪判決が下った。量刑が決まるまで男性刑務所に拘留されるはずだったが、トランス女性であることが考慮され、スコットランドで唯一の女性専用刑務所に送られた。しかし、女性受刑者の身の危険が脅かされるという声が高まり、最後は男性刑務所で受刑することになった。トランス女性が女性へのレイプ罪で有罪となるのは、スコットランドではこれが初だ。

トランス女性は男女どちらの刑務所に送られるべきだろうか。ブライソンの例では「元男性」「女性に対するレイプ罪で有罪」という特徴があったために、最終的に男性刑務所に送られた。スコットランドではトランスジェンダーで受刑中の人が少なく、トランス専用の刑務所は設置されていない。

イギリスで浮上する「平等法」の改正

一方、イギリス政府は、年齢、障がい、婚姻関係、人種、宗教、性などによる差別から国民を守る「平等法(2010年)」の中で定義される「性」を「出生時の性」と再定義するため、法律の改正に動きだした。「性についての解釈が揺らいでいる。平等法の下での定義について疑問を投げかけるのは理にかなっている」と政府閣僚は説明する。

議会での議論には時間がかかり、すぐに改正は実現しない見込みだが、もし改正があれば、トランスジェンダーである人は男女いずれか専用の空間(例えば病棟)への出入りが限定される可能性もありそうだ。

人間の基本的なニーズに対応するトイレ、あるいは男女それぞれで分けられることが多い病棟、刑務所などでトランスジェンダー対応が必須となってきた。

その一方で、例えば男性として生まれた人が女性であると自認し、法的にも女性としての認定を受けた後で、脱衣所など女性専用となってきた場所に出入りすることは認めるべきなのか、あるいは限定するべきなのか。限定するとしたら、差別にならないのか。イギリスでは、先の元男性・トランス女性の例をきっかけに、「立ち入りさせない」雰囲気が強くなっているが、まだまだ模索が続いている

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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