イギリスが「トイレは男女別」を義務付けた理由 活発化するトランスジェンダーをめぐる議論
イギリス政府の推定では国内の20万~50万人がトランスジェンダーに該当する。ある調査では41%が差別を受けた経験があり、否定的な反応を避けるため、67%がトランスであることを公表しない。見た目が男性でも心は女性(「トランス女性」)、あるいは逆に女性の姿をしていても自分は男性と認識している人(「トランス男性」)とどう付き合ったらいいのかについても定まった形があるわけではない。手探りの状態なのだ。
スコットランドでは2021年、トランスジェンダーの生徒を支援するための指導書を配布している。これによると、トランスの生徒は出生証明に書かれた性別(男性か女性か)と同一の専用トイレを利用する義務はない。
先駆的なスコットランド、中央政府と対決
イギリスでは、トランスの人はパスポートや運転免許証など法的手段に訴えることなく性や名前を変更できることが多いが、法的変更は「性認識法」(2004年)に基づいて、法的に性を変更することが可能だが、医師による診断書が必要になるなど、手続きはかなり煩雑だ。
こうした中、地方分権によって自治政府があるスコットランドでは、昨年末、性別変更手続きを簡素化する法案が自治議会で可決された。
これによると、最終判断をイギリス全体をカバーする性認識委員会に任せるのではなく、スコットランド内に委員会を置き、申請時には医師による診断書は必要とせずに、自己申告での変更が可能とするほか、申請時点で自認する性として生活した期間は2年間ではなく、3カ月に減少させる。
さらに、現状では申請者は成人(18歳以上)が対象となるが、これを16歳に下げる。ただし、16歳と17歳の場合は自認する性として生活した期間を6カ月にする。これにより、日本で言うと高校生入学時から、トランスジェンダーの人が心と体の性の不一致を少なくとも法的に解消できることになるわけだ。
スコットランド議会に法案が提出されると、性自認が改めて議論の的となった。
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