「らんまん」に登場?森鴎外、牧野富太郎の意外関係 同じ1862年生まれで、それぞれの経歴も特異

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鴎外にとって、海外文学の翻訳は、ライフワークの1つだった。当時の日本人として例外的にドイツ語がものすごくできた鴎外は、「ドイツ語でしか翻訳されていない北欧の文学」も日本語に翻訳した。

例えばアンデルセンの『即興詩人』、劇作家イプセンの『人形の家』などを明治の日本に持ち込んだのは鴎外なのだが、どちらも元々ドイツ語に翻訳されたものを読んでいたらしい。

もちろんドイツ文学も訳しており、大きな仕事としてはゲーテの『ファウスト』翻訳がある。実はこの『ファウスト』翻訳、牧野富太郎が関わっているのだという! これについて、鴎外が実際にエッセイにつづっている。

ファウストの場合では佐佐木信綱さんが好意を以て一読して下さることになった。そこで私と佐佐木さんとの心附いた限が正誤表に上ったり、また象嵌で直されたりすることになる。その外特にある箇条に関して教を受けて正誤した事もある。
その一例は第一部でグレエトヘンが恋の成否を占う花はステルンブルウメと原本にある。それを江南紫と書いたが、私自身に不安心なので、牧野富太郎さんに問い合せた。
すると牧野さんが精しく調べて返事をして下すった。どうもドイツで単にステルンブルウメと云っている花は日本には産せないらしい。随って和名漢名なども無さそうだ。そこで属名のアステルに改めた。
(『訳本ファウストについて』『ファウスト 森鴎外全集11』ちくま文庫、筑摩書房)

佐佐木信綱、牧野富太郎をぜいたくに活用

佐佐木信綱は『万葉集』の研究で有名な国文学者なのだが、実は鴎外が翻訳の下読みをさせていたことが判明(すごく著名な国文学者を、翻訳のお手伝いに使わせるの、なんたるぜいたく……とここだけでも愕然とする)。そして鴎外は、ドイツ語の花の名前がよくわからなかったので、牧野富太郎に問い合わせた。

牧野富太郎を植物辞典代わりにする森鴎外。ぜいたくすぎやしないか。しかしそれが気軽にできるくらい、2人の間には親交があったのだろう。ちなみに「日本にはない花だった」というオチで、富太郎の植物知識がいかんなく発揮されたことがよくわかる。

ドイツ文学だけでなく、漢文を訳すときも、またしても森鴎外は牧野富太郎に「この植物がわからん、教えて!!」とアドバイスを求めている。「漢詩にこんな樹木が登場しているのだが、結局どの樹のことを言っているんだ?」と富太郎に教えを請うていたらしい。

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