私たち現代人が気づけば「井の中の蛙」に陥るワケ 知らずに「フィルターバブル」に飲み込まれている

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たとえば、ぼくたちがインターネットを使うとき、自分の知っていることや興味がありそうなキーワードで検索をかけます。そして、そのデータからAIがぼくたちが興味を持ちそうなサイトを巧みに探し出してリンクを張ってきます。

ぼくたちは自分で判断して自由にリンクを選んでいるように感じますが、じつは選ばされているのかもしれません。このような現象をフィルターバブル現象といいます。選んだ情報でできた泡のドームのなかにいるみたいだというたとえです。

そうなんです。ぼくたちはあらゆる人やモノやコトとつながれる一方で、近くに存在しているのに、遮断されているかもしれないのです。本当に自由になるためには、そういう構造に気づく必要があります。これをメタ認知といいます。

では、気づかないままでいるとどんな問題が起こるでしょうか?

「外側」に出る方法

同じような興味関心や価値観を持つ人や情報とばかり接することになると、同じような意見ばかりが目につき耳に入ります。そうすると、まるで世界中みんながそう言っているように思えてきてしまいます。これをエコーチェンバー現象といいます。反響する部屋のなかで同じ声を何度も聞いているというたとえです。

つまりぼくたちは、自分自身がどんな人間なのかを知り、自分の世界の境界を感じ、その外側の世界があることを知り、自分の世界をどんどん広げていくことで、より選択肢を多く持ち、自由度を高めることができるわけです。

では、具体的にどうしたら「外側」に出られるのでしょうか? 

ぼくが実践している方法を紹介します。まずオススメするのが、本屋さんや図書館をフラフラ歩いてみることです。知りたいテーマやキーワードを頭に浮かべながら、できるだけそのテーマと関係なさそうな棚をめぐります。本棚は立体的な構造ですし、本の表紙や背表紙は検索結果の文字列とは違う固有のイメージを持っています。

そういう情報に触れることで、ネットではたどり着けなかった意外なつながりを発見できるかもしれません。また、古い書籍の多くは電子化されていませんので、図書館のほうが検索ではたどり着けない情報と出会える可能性があります。無演奏の曲をつくったジョン・ケージは、自らの作品に偶然性を吹き込むためにサイコロを使った作曲もしました。自分の想定を超えることで「外側」に出ようとする工夫です。

同じように、ネットで検索するときも、調べたいことと意外なキーワードを一緒に使うことで、自分やAIの境界を破ることができます。

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