「娘婿はみんな移民」フランス一家の"異文化衝突" 海外作品をどう買い付けるか、配給会社に聞く
ところが、海外では、窓口の担当者が自分で責任をもって案件を担当していることが多い。組織全体が「この仕事はこの人に任せているのでその人が決めればいい」という雰囲気です。
そういう意味ではスピーディーに物事が動きます。また、日本では「この人に打診するにはまずはこの人に言わないといけない」という根回しの文化がありますが、そういう文化はありません。ダイレクトにその人に話して、ダイレクトに返事が来ます。仕事の場面においても、大人で個人主義が貫かれていると思います。
――今年の3月にフランスやフランス語圏の文化遺産の保存・促進に貢献したとしてルネサンス・フランセーズのフランス語振興賞を受賞しています。
ジェラール・フィリップの映画祭を手がけて日本で定着させたこと、また、モリエールなど作家の活動を日本で紹介したこと、そして、ほかの配給会社が買わないようないわゆる「フランス的な」映画を買い付けて上映していたことが評価されて今回の受賞に至ったのだと思います。「いいものを知ってほしい」という一心でやってきましたが、それが、このような形で評価されたことは嬉しいですね。
他者を尊重し、責任を持って自由を選択
――ちなみに、「フランス的な」とはどのようなことだと思いますか?
やはり「エスプリ」ですね。知性を感じさせる行動というか、国民全体が大人なのだと思います。自由主義の国なので、「私は干渉して欲しくないからあなたのことも干渉しない」という姿勢が徹底されています。
昨年、ノーベル賞を受賞したアニー・エルノーは、自身が50代で経験した年下の既婚男性との恋愛を『シンプルな情熱』に書いています。映画化もされ、日本では私の会社で配給しましたが、フランスの作家はそれを描くことに対して自分で責任を取っているという確信があるのだと思います。
この作品で描かれるような移民ジョークも、フランスのエスプリがあるので、深刻な問題に発展しません。そういうことを作家のみならず、国民全体が理解している。ある意味、エゴイストな国と言えばそれまでですが、やはり「他者を尊重し、責任を持って自由を選択する」というスタンスを持っているのではないでしょうか。
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