「生活困窮者を入居→転売」貧困ビジネスの正体 自治体から門前払いされた63歳男性が餌食に

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「給湯器は壊れ、約束した就労支援もいっさいなかった」と、アパートを紹介した一般社団法人に対する怒りをあらわにするカズヒコさん。生活困窮者を集めることで入居率を高めたアパートが転売されたケースもあると聞き、驚いたという(筆者撮影)
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現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。

給湯器が壊れたアパートを紹介された

鍋と電気ケトルだけでは足りない。炊飯器も使って湯を沸かす。そして床にずらりと並べた牛乳パックへ熱湯を注ぐ。保温のためだ。ある程度ためては浴槽に投入。この作業を10回以上繰り返し、なんとか体がつかれる程度まで湯を張ることができた。

カズヒコさん(仮名、63歳)が東京都内の賃貸アパートに入居したのは昨年6月。最初から給湯器が壊れていたという。物件を紹介した団体や不動産管理会社に問い合わせても、「自分で業者を探して」「あんたみたいに文句を言う人は初めて」「嫌ならうちと縁を切って出ていけば」などと言われ、らちが明かなかった。

一番困ったのは風呂に入れないことだったという。仕方なく週2、3回バスと電車を乗り継いで銭湯に通ったが、交通費と入浴料で1000円以上かかった。暑い日も増え、帰宅すると汗だくになっていることも。水シャワーで済ませる日もあったものの、どうしても湯船につかりたいときは鍋や電気ケトルなどを使って湯をためた。

再三にわたって苦情を入れた末、給湯器が修理されたのは2カ月後。すでに夏が終わろうとしていた。

「終始こっちを見下すような言葉遣いをされました」

給湯器の故障をめぐるトラブルがきっかけで不当な追い出しを受けた際に、扉の右側上部に設置された特殊な鍵。これにより室内に入ることができなくなったが、中にはまだ家財道具が残ったままだという(カズヒコさん提供)

腹に据えかねたカズヒコさんは窓口となった団体に対し、相当分の家賃を減額するよう求めた。できないなら支払いは留保すると伝えると、担当者がアパートに現れ、今すぐ退去するよう通告された。

カズヒコさんが衣類などわずかな荷物を持ってアパートを出ると、すぐに特殊な鍵が設置され、二度と入室できなかった。電話で抗議をすると「おめーが、家賃払わないのが悪いんだろ!」と怒鳴りつけられたという。昨年10月の出来事だ。

カズヒコさんはやむを得ずネットカフェに。しかし、職場で住まいのないことがバレ、見つけたばかりの仕事をクビになってしまう。所持金が底をつくなか、怒りが収まらず、消費者センターに駆け込んだところ、生活困窮者支援に携わる民間団体を紹介された。そこでカズヒコさんは同じような被害に遭ったのは自分だけではないことを知る。

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