「生活困窮者を入居→転売」貧困ビジネスの正体 自治体から門前払いされた63歳男性が餌食に

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カズヒコさんも東京郊外や千葉、埼玉にある物件を紹介されると同時に「生活保護、受給しますよね」と念押しされた。その場で賃貸借契約書に署名し、就労支援などが受けられるという有料サービスを契約。加えて生活保護の受給日が決まり次第連絡することや、家賃は自治体が直接大家側に振り込む「代理納付」の手続きをすることを約束させられた。

この間わずか30分ほど。内見もしないまま部屋を決めさせられたことや、生活保護の利用が前提になっていることに違和感を覚えたものの、このときは住まいが確保できたことの安堵感と、これで生活を立て直すことができるという希望が上回った。

空室を生活困窮者で穴埋めし、転売

ところが、いざ入居してみると給湯器が壊れていただけでなく、期待していた就労支援もいっさいなかったという。法人からあてがわれたアパートは都心から電車で1時間かかった。ネットで仕事を探しても求人自体が少なく、あったとしても「定年60歳」などの制限があった。カズヒコさんが担当者に就労支援について尋ねると、「このへんは(仕事は)ないんだよね」という返事が返ってきたという。

そして問題はほかにもあった。

支援団体が調べたところ、この法人が生活困窮者を集めてアパートに入居させ、入居率を高めた後、そのアパートが転売されていた事例が確認できたのだという。一般的に入居率が高い物件は高値で売却できるとされる。

支援団体側は「空室を穴埋めした後で転売して利益を上げているのだとすれば、新たな貧困ビジネスとして広がっていく恐れがある。生活困窮者が住宅穴埋めの駒として利用されかねない」と危惧する。今年2月には「住宅穴埋め屋対策会議」を結成。被害相談などを受け付けている。

約束した就労支援がなく、不当な追い出しを受けたとして、アパートを紹介した一般社団法人などを提訴したカズヒコさん。支援団体の関係者とともに厚生労働省で行った記者会見では、「法人がやったことは、私を再びホームレス状態にすること」と言い、涙で言葉を詰まらせた(筆者撮影)

同時にカズヒコさんも就労支援が行われなかったことや住まいからの追い出しは不法行為に当たるとして、同法人などを相手取り、損害賠償を求めて訴訟を起こした。

「もう一度働いて生活を立て直したかった。だから就労支援のためにお金も払ったのに、担当者からは求人情報のひとつも出てきませんでした。(給湯器の故障は)自分たちのミスなのに、家財道具も奪われて追い出されたんです。(法人がやったことは)私を再びホームレス状態にすることでした。今も思い出すと悔しくて、涙が出そうになる」

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