「浅井長政」信長の妄信を得た将が裏切る深層心理 信長を敗走させるも討ち取れず報復の対象に

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一方の長政にとっても、織田の力は宿敵・六角氏を攻めるにあたりこのうえないプラス材料です。これは織田・浅井の対等な同盟で、織田・徳川の同盟と同質のものでした。このとき浅井は朝倉とも同盟関係を結んでいましたが、この時点では織田、朝倉のあいだに緊張関係はなかったので問題にはなりませんでした。

浅井長政はなぜ裏切ったのか

最大の謎は、長政がなぜ信長を裏切ったかです。

裏切りの理由としては、長政の父である久政が朝倉との古くからの友好関係を重んじ、かつ信長を嫌い、強引に長政に挙兵をすすめたという説が定着していました。しかし最近では、久政の代で朝倉と同盟関係を結んだというような事実はなく、さらには久政自身がそもそも長政と家臣のクーデターによって当主の座を追われていたため、とてもそのような重要な方針を指図できる立場になかったことがわかっています。

この長政の裏切りは当時から不可思議だったらしく、信長ですら当初は信じようとしなかったほどです。

ここからあくまでも推測ですが、いくつかの事実と状況から長政は信長と同じような気質の野心家であったと考えると、裏切った理由も見えてきます。わずか16歳で父を当主の座から追い、主家の立場にあった六角氏を裏切り、朝倉と結んで織田とも同盟する長政は、並の武将ではありませんでした。

信長が朝倉を攻めるにあたり、長政は朝倉とも同盟を結んでいたため選択を迫られることになります。長政が野心的な武将と仮定すると、織田と朝倉のどちらが自分に都合が良いかと考えれば、飛ぶ鳥を落とす勢いの信長といつか衝突することが目に見えていたのではないでしょうか。そして浅井家の家臣団は独立の気風にあふれています。長政が天下を狙うなら、最大の敵は信長のはずです。

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