「浅井長政」攻め前日、徳川家康「信長に抗議」の内幕 言うときは言う!「姉川の戦い」に見る芯の強さ

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信長の次なる命令にも素直に従っている。課せられたミッションは言うまでもなく、裏切り者の浅井長政を討つことである。

「先に浅井を攻め滅ぼしてそのあとに朝倉を攻める」

『徳川実紀』によると、信長はそう言って家康に援軍を求めたという。家康は要請に応じて自ら5000の兵を率いて駆けつけた。だが、合戦前日というタイミングで、家康は信長の命令に抵抗を見せることになる。

『三河物語』によると、信長は家臣の毛利良勝を通じて、布陣についてこう命じている。

「明日の合戦の備えは、一番隊は柴田勝家、明智光秀、森可成などに命じた。家康は二番隊をたのむ」

これに対して家康は「どうせ加勢をするなら、ぜひ一番隊をお命じください」と応じている。なんとも意欲に満ちた返事だ。信長も悪い気はしなかっただろう。ただ、すでに一番隊には命じてしまっているため、取り消すのも角が立つ。

あらためて二番隊での出陣を要請した信長だったが…

信長は家康に「二番隊といっても戦況によっては一番隊となることも多い」として、一番隊も二番隊もそう大差ないと伝えたうえで、家康に改めて二番隊での出陣を要請している。

信長に意欲も見せられたことだし、このあたりで引き下がってもよさそうだが、家康は譲らない。「一番隊も二番隊も同じだといわれるのは納得がいきません」としている。家康がこだわったのは「後世にどう書かれるか」ということである。

「たとえ二番隊が一番隊になったとしても、一番隊は一番隊、二番隊は二番隊と書かれて後世に残るでしょう。だから無理にも一番隊を命じていただきたい」

家康はさらに「自分がすでに年寄りならば、三番隊、四番隊でも、命じられたとおりにいたします」としながら、こう続けた。

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