東レ、刷新とは程遠い13年ぶり社長交代の深層 若返りは進まず、経営体制を維持したままに

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13年ぶりに社長交代に踏み切った東レは近年、品質不正問題に揺れている(撮影:尾形文繁)

長期政権が続いてきた東レが、久しぶりに社長交代を行う。だが、その内実は体制刷新とは程遠い。現社長の日覺昭廣氏(74)が経営の中枢に留まるからだ。この人事の背景には何があり、どんな意味があるのか。

東レは3月27日、6月末の株主総会後に日覺氏が代表権のある会長に就き、これまで繊維の営業畑一筋で実績を上げてきた副社長の大矢光雄氏(66)が代表権のある社長に昇格すると発表した。社長交代は実に13年ぶりだ。

ただ、日覺氏は「2023年度(2024年3月期)は、(新たな3カ年の)新中期経営計画が始まる年。その完遂に向け、6月以降は大矢新社長と二人三脚でやっていく」とも述べ、引き続き舵取りに意欲を示す。

2023年3月期を最終年度とする現在の中期経営計画は、事業利益が目標の1800億円に対し、大幅未達の1000億円程度の着地になる見通しだ。新型コロナウィルス影響の長期化、ウクライナ戦争や原燃料の高騰があったとはいえ、日覺氏は不本意な業績の中で身を引きたくはないはず。今後も代表権を手放さないことからも、その思いがにじむ。

では、一体なぜ、このタイミングで社長が変わるのか。

日覺氏は「東レは最終製品をつくっていないこともあり、社会での認知度、市場での評価は高くない。大矢新社長には商品の価値評価を高めてもらい、東レのブランドを浸透させてもらいたい」と課題認識や狙いを語る。しかし、どうも理由はそれだけではなさそうだ。

不正問題で日覺氏の支持低下

尾を引いているとみられるのが、東レの不正問題だ。

2022年1月、樹脂製品の難燃性などを保証するアメリカの第三者認証取得で、30年以上にわたり不正を行っていたことが発覚した。東レでは2017年、子会社でタイヤの品質データの改ざんが発覚し、不正の再発防止やコンプライアンス強化を掲げていたばかりだった。

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