なぜあの市場を我が社は傍観するのか
経営幹部候補生の多くにとっては、他社が牽引する成長市場に後追い参入することが使命となる。つまり、市場のライフサイクルの成長段階までに着手する後発のケースである。
他社がリスクを取って存在を証明した市場は、トップにも社員にも魅力的に映るし、なぜ我が社は傍観するのかと誰でも問いたくなる。
PPM(製品ポートフォリオ・マトリックス)理論も、市場の増分を取り込むことで他社の顧客を奪いに行かなくても首位に躍り出る余地が残る成長市場には、資源投入を奨励する。
後発参入は、場合によっては先発より有利なことも知られている。技術進歩の目覚ましいフィールドでは、新しい技術を採用した後発企業が、古い技術にコミットした先発各社を追い落としてしまう現象は珍しくない。
たとえば、技術が高額設備に宿る製鉄業で日本勢が20世紀後半に欧米勢を追い落とした現象は、この資本ビンテージ理論のロジックで説明できる。
後方互換性を保証しなければならない製品ラインに技術が宿るコンピューターでDECやSUNが1990年前後にIBMを追い落としたのも、同じことである。
しかしながら、本書の分析結果はビンテージ理論を支持しない。なぜならば成長市場を扱った分析では技術進歩の早いフィールドで成功ケースが出ていないからである。
それどころか、PPM理論も支持しない。理論が想定するようなシェア争いを派手に演じて成功したケースがないに等しいからである。
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