ここに分類されるケースは8例で、第1章の半分に満たない。ということは、下手に後追いするより、市場が成熟するのを待って仕掛けたほうが勝ち目は豊富ということになる。その点は一考に値する。
自社事業の隣地開拓で成功した企業とは
「売り物」をずらすには、自社の祖業か本業の周辺に成長市場がないものかと見渡してみるとよい。具体的な手口として、ここでは本業か祖業の(1)技術か(2)販路を応用して成り立つ売り物を開拓したケースが浮上している。
後追いのエクステンション(拡張)はプレーヤーを選ばないが、本書の分析は、企業として持つ技術基盤や顧客基盤の汎用性が重要であることを示唆している。
すでに保有する経営資源をエクステンドするという発想は、ペンローズの『企業成長の理論』に端を発する。原著初版は1959年なので古典と呼んで差し支えないと思うが、この節に登場する4ケースは古典的な資源学派の戦略論と親和性が高い。しかしながら、成功ケース全体に占める割合は決して大きくない。
「売り物」のエクステンションで成功したケースとして本書で取り上げたのは、以下となる。
長谷川香料(カットフルーツ、12.3%)
ファンケル(サプリメント、15.5%)
アビリット(遊技場向けプリペイドカード、25.0%)
* %の数字は、売上高営業利益率の期間中加重平均を指す。対象企業の選別法などについては書籍を参照
「売り先」を変えるには、事業活動の出口を主戦場の隣接地に求めるのがよい。
具体的な手口として、ここでは先発各社が捨てた(1)地域か(2)顧客を拾うケースが浮上している。
いずれの場合も先発企業は自ら選んだ市場に引きこもり、追随してこない。その結果、「残り物には福がある」という格言どおりの結果が出やすい。
先発企業が機会を活かし損ねるのは、自社の視点から「有利」な売り先を選ぶからである。自社にとって利のある売り先は、他社にとっても利のある売り先と映ることが多く、競合他社も同じ売り先に群がってくる結果、事前の「有利」は事後の「不利」に転じてしまう。事前の「不利」が事後の「有利」に転じるのも、この逆説のロジックによる。
この戦略は、強いリーダーを必要としない反面、ニッチに甘んじる覚悟を迫る面がある。
「売り先」のディビエーション(逸脱)で成功したケースとして本書で取り上げたのは、以下となる。
ユニマットライフ(コーヒー、19.6%)
ティーオーエー(監視カメラ、14.2%)
オーベクス(サインペン先、19.3%)
* %の数字は、売上高営業利益率の期間中加重平均を指す。対象企業の選別法などについては書籍を参照
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