多くの企業幹部が誤解しがちな「先行者優位」の力 高収益ケース続出「揺籃市場で最速で仕掛ける」

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高収益事業を創った成功ケースの3分の2は、揺籃市場に集中したと著者は指摘します(写真: metamorworks/PIXTA)
経営戦略を担う幹部候補生のために、日本企業を題材に累計464のビジネスケースを集めた『経営戦略の実戦』シリーズ(全3巻)がついに完結した。
高収益事業を創り上げた先人たちは、どのような挑戦をしたのか。そこから私たちが学べる教訓は何か。151の成功ケースと101の失敗ケース、計252ケースを取り上げたシリーズ第1巻『高収益事業の創り方』から、揺籃市場で成功を収めたケースの一部を抜粋・編集してお届けする。

多くの人が誤解する先行者優位

先行者優位という概念がある。もっともらしく聞こえるが、そうした優位が見られないケース(反例)が注目を集めることもあり、戦略論における地位が定まったとは言えない。

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マイケル・ポーターの『競争の戦略』でも、言及した箇所はあるが、それだけである。先行者優位を肯定もしていなければ、否定もしていない。

問題は指標と定義にあると私は考える。

反例の大多数は「優位」を占有率や成長率に置き換えている。

さらに、「先行者」の原義は絶対級で「もっとも早く仕掛けた者だけ」であるのに、日本語になると比較級で「早く動いた者ほど」と誤解する人が後を絶たない。

それゆえ、概念を巡る混乱は容易に収まらない。

本来の「先行者優位」は圧倒的な威力を持つ

本書の帰納的分析結果は先行者優位を肯定する。原義に忠実に、そして優位を収益率で測る限り、先行者優位は圧倒的と言ってよい。

平易に言い換えてみよう。少なくとも高収益事業を創るという視点に立つなら、何はともあれまだ誰も取り組んでいない「世の中・新」の新規事業に挑むに限る。

自社で取り組んだことがなかったというだけの「自社・新」では意味がないので、そこは気をつけていただきたい。

もちろん成功確率は大きくない。だが、失敗のダメージも大きくないことを考えると、挑むが勝ちである。

挑んで先発に成功すれば、しめたもの。残念ながら誰かに先を越されてしまったら、後追いの逆転は潔く諦めて、次の挑戦機会を待てば良い。

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