多くの企業幹部が誤解しがちな「先行者優位」の力 高収益ケース続出「揺籃市場で最速で仕掛ける」

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推奨戦略は、事業立地への働きかけ

推奨戦略は、事業立地に働きかけるものである。構えに働きかけて成功したケースは、極端に影が薄い。

事業立地は「誰を」相手に「何を」売るかで定義される。それゆえ、揺籃市場の定跡は「売り物」か「売り先」を賢く選択することを要求する。

「売り物」には2つ意味があり、辞書の項目1には「売るべき品物」と出ている。

この物理的なモノも無視できないが、それ以上に項目2の「看板とする自慢のもの」が本質的に重要である。

同様に「売り先」も、固有名詞で綴る顧客リストより、集合名詞の「客層」を重視したい。

立地選択のキーワードは「ありがとう」

本書の分析結果は3:1の比で「売り物」の選択に秀でたケースが優勢であることを示している。「売り物」に力点のあるケースは60、「売り先」に力点のあるケースは19あった。

「売り物」は、顧客に感謝されるように選ぶパターンが3つ、自社の強みを活かすように選ぶパターンが1つあり、ケース数で見ても3:1の比で前者が優勢である。

「売り先」も似ていて、感謝してくれやすい顧客を選ぶパターンが2つ浮かんでいる。

立地開拓に際して念頭に置くべきキーワードは単純化すると「ありがとうコール」である。顧客から感謝に次ぐ感謝を受ける可能性があるか否かを判断基準に据えれば、良い立地選別に成功する可能性が高くなる。

感謝されるのは、顧客にとって大事であるのに入手しにくいものを供給している証である。逆に感謝されないのは、あってもなくても大差ないか、誰でも簡単に入手できるものしか供給できていない証と言えよう。

たいして感謝されないものを買ってもらうには、利益が犠牲になるのは致し方ない。

他社に先駆け「小さな池」を見つけて主になる

ここに登場するケースは、いわゆる「小さな池の大きな魚」に該当するものが多い。新規事業を狙うとき、いたずらに規模を追いかけるのは禁物と言えよう。

もちろん「小さな池」は「地図」に出ているものではなく、実際に見つけるとなると一筋縄ではいかないが、世の中で他社に先駆けて「小さな池」を見つけると、その主(ぬし)に収まることができる。

池の小ささを見て、有力企業が参入を諦めるからである。

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