理化学研究所が、有期雇用の研究者が無期雇用になる権利を得る直前に雇い止めしようとしている問題で、批判や違法性を回避するための策を繰り出し、研究者と対立している。
「理研が有期雇用の研究者を2023年3月末で雇い止めしようとしており、600人が失職するおそれがある」。理研の労働組合が会見を開いて告発したのは、1年前の2022年3月25日だった。間もなくタイムリミットを迎えるが、問題は解決していない。
2013年4月1日施行の改正労働契約法により、有期雇用の研究者は、雇用期間が通算で10年を超えれば無期雇用への転換申込権を獲得することになった。そこで理研は、同法の施行から3年後の2016年に就業規則を改定。有期雇用の通算期間を最長で10年までとし、申込権が発生する直前で雇用を打ち切るルールを後出しで作った。第一陣となるのが、この2023年3月末に予定する大量の雇い止めだ(理研、大量リストラまで半年「4月1日」巡る攻防)。
2022年3月の理研労組の会見で理研のやり方が知れ渡ると、SNS上などでは理研のやり方を問題視する声が広がった。そこで理研は、世間からの強い批判をかわそうと、ある対策を打ち出した。その是非をめぐり、研究者と理研の間では法廷で今なお争いが続いている。
新人事制度「アサインド・プロジェクト」
アサインド・プロジェクト(以下AP)。この聞きなれない名前は、理研が2022年9月末に発表した新たな人事制度の目玉だ。「目標と期間を伴う従事業務」として、研究者などを公募するものだという。
理研は就業規則の「10年上限」を2023年4月1日から撤廃することも併せて発表。APには3月末で有期雇用の期間が通算10年になる人も申し込めるとし「すべての職員に、新しい有期プロジェクトへの挑戦機会を提供している」とアピールする。
この時点までに多数の研究者が理研を既に去っており、雇い止めの危機にある研究者の数は約380人に減っていた。これに対し、公募するAPのポストは400を超すという。一見すれば、誰でも実力さえあれば理研に残って研究を続けられる、フェアな制度のように映る。
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