理研、雇い止め批判の回避狙うカラクリの実態 3月末のリストラ強行へ、迫るタイムリミット

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ところがそこには、有期雇用の研究者を無期雇用に転換させないための、仕掛けがある。

その1つが「マッチングの壁」だ。研究者らには、それぞれ専門の研究内容がある。畑違いの研究分野で求人があっても、応募することはできない。つまり、理研は雇い止めしたい研究者にマッチする内容の求人を意図的に出さないことで、無期雇用への転換をいくらでも阻止できる。

その懸念から理研労組は理研に、この3月末で有期雇用が通算10年になる研究者にマッチするAPの求人はどれくらいあるか、割合を明らかにするように求めた。だが、理研は今年3月、回答を拒否する旨を伝えてきたという。

同じテーマなのに別の研究室へ

理研による意図的な「無期転換の阻止」を疑わせる事例も、既に起きている。

APは、それぞれの研究室からも予算があれば公募を出せる。3月末で有期雇用が通算10年になるA氏が所属する研究室の主宰者は、A氏が研究室にとって必要な人材だと考えていた。そこで、A氏と相談のうえでA氏をAPで採用するため、A氏の研究内容や経歴にぴったりと合う内容でAPの公募をかけた。 

ところが、1次面接まで順調に選考を通ったA氏に対し、理研は2月にあった人事幹部との2次面接で「よそへ転出した方がいいのではないか」などとしきりに言及。A氏の研究室の希望とは裏腹に、2月半ばに不合格を決めた。

こうした事情を知ったA氏は理研を相手取った訴訟まで考えた。だが、それを察知した理研からはなだめるためなのか、研究人事委員会の委員長の研究室に移ることや、1年間の期間限定という条件付きで、APとして研究の継続を認めるオファーを出してきたという。

A氏は研究を続けたい一心で、やむなくオファーを受けたが「APで『不採用』にされたのと同じ研究テーマで『研究室を移れば研究を続けてもいい』と言われたことに、意図的なものを感じる」とこぼす。

APへの採用に関して、選考を経ないトップ判断による「理事長特例」というオファーを持ちかけているケースもある。3月末での雇い止めを不当として理研を訴えた一部の研究者に対して主に出されているようだが、そこには狙いがある。

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