「育ててもすぐ退職」一括採用の破綻が招く事態 卒業後すぐ就職できず若年層の失業率は上昇も

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いま、岸田文雄首相は、企業にはジョブ型への転換を、労働者にはリスキリング(学び直し)を求めています。ジョブ型になったら失業者が増えるので、職に就きたかったらちゃんとスキルを高めてくださいよ……。理にかなった話です。

問題は、企業の対応です。いま日本企業は、ジョブ型への転換を進める一方、異動・新卒一括採用・OJTによる人材育成・ジェネラリスト志向といった日本独特のやり方を変えていません。アメリカ式の雇用に転換したいのか、日本式を維持したいのか、いわば「股裂き状態」です。

苦労して学生を採用する必要があるのか?

とくに、検討を要するのが、新人の採用です。少子化で新卒学生の数が減り、各社とも採用活動では大苦戦しています。今年は初任給を数万円単位で一気に引き上げる動きが相次いでおり、人材獲得競争がますます熾烈になっています。

今回、大手企業の人事部門関係者32名に、今後の新人採用のあり方についてヒアリングしました。新卒一括採用が継続するという予想と消滅するという予想がかなり拮抗していました。まず、今後も新卒一括採用が続くという予想から。

「当社でも高度専門人材へのニーズが高まっており、中途採用が増えるでしょう。ただ、日本では雇用の安定が重視されますし、移民社会のアメリカとは転職やキャリアに対する考え方も違うので、中途採用が中心になるというのは、ちょっと考えにくい。今後も新卒一括採用はなくならないと予想します」(商社・部長)

「当社のような製造業では、工場の操業に多数の従業員が必要で、数の確保が課題です。新卒一括採用だと多数の新人を効率的に集められますし、中途採用と比べて採用コストも安くすみます。新卒一括採用を中心に、足りない人材を中途採用で補完する形になるでしょう」(素材・マネジャー)

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